くらげ×寺島ヒロ 発達障害あるある対談 第302回 「『わたしのトリセツ』ってご存知ですか?作るにあたっての意外な困難さ」ってお話
登場人物
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本文
[く] こんばんは。くらげ。
[寺] こんばんは。寺島です。
[く] 今日からゴールデンウィークが始まりましたね。最大で10日間ということと、新型コロナウイルスの移動制限がないこともあって、とても人出が多いゴールデンウィークになりそうです。寺島さんはどこかに行く用事はありますか?
[寺] ええと、明日息子が新潟にトキを見に行くと言うので朝っぱちに伊丹空港まで送って、ついでに遊んで来るつもりです。ミナミより向こうは滅多に行かないから楽しみですね。 あとは特に自分の予定はないので、この時期に集中して書籍のペン入れを進めようと思っております。
[く] うちも大きな予定はありません。5月3日に仕事で軽いイベントをするくらいですね。お互いに出不精というか人混みが苦手なので「人混みが出来る時期はむしろ仕事のチャンス」みたいなところがありますよね(笑)
[寺] 発達障害系フリーランスあるあるかも(笑) でも、人の多い時が稼ぎどきになる小売業などには、向いてないなあと思いますね。
[く] 仕事なんて選ばなければいくらでもあるって言いますけど、ボクらは選ばないと本当に死にますからね。幸い今はかなり自由に働かせてもらっているので、時間的には融通がききますが、オフィスワーカー時代は、ボクも本当によくぶっ倒れてましたし…。
[寺] 仕事で求められる作業自体はできても、労働環境とか、周りの人のノリが合わないとか、そういうこともありますよね。自分で自分のことをどのくらい理解できてるかというのが大事になってくると思います。
[く] ただ、そういうことを理解するのってなかなか難しいですよね。ボクも自分の特性や困りごと完璧に人に説明できるかというと全く自信がありません。
[寺] それな!ですよ(笑)メタ認知できてて口頭や文書で説明できてたらそれはもう8割方問題が解決しています!
[く] それはそうかもしれませんね。自分でも「なんでかうまくいかない」と思っていることの方が大半なんですよね。
[寺] そういえばくらげさんは「わたしのトリセツ」というものを知っていますか?
[く] 「わたしのトリセツ」ですか?なんとなく聞いたことはあるんですが、固有名詞でしょうかね?
[寺] 固有名詞と言うか…発達障害周りの便宜上の用語なのかな〜と、思います。「こういう支援を求めます」というのをある程度決まったテンプレに入れて、現状の障害状態を詳しく知らない人にもわかりやすくしたもの…というかんじ?あと西野カナさんの歌とは関係ありません(笑)
[く] 西野カナ?なんですか?
[寺] 「トリセツ」っていう歌があるんですよ。私と付き合ったらちょくちょくプレゼンしてね、きれいって爪を褒めてね、太ったとか余計なことは気がつかないで、一点ものにつき返品は受け付けません♪みたいな、交際相手の男性へのメッセージソング。
[く] それは本当に関係ない(笑)いや、このnoteでも時折「自分を説明するための資料があった方がいい」と言っていましたが、すでにそんなに広まっていたんですかね?
[寺] 会社なんかではまだそんなに〜という感じだと思いますが、最近は学校の支援教室が「子どものトリセツ」を求めてくる場合もありますし、デイサービスに行くと出してくれと言われることも多いですよ。
[く] 私の周りでは社会人になってから発達障害が発覚したケースが多いので、学校などでそこまで広まってるとは知らなかったです。寺島さんも作ったんでしょうか?
[寺] トリセツという名前ではなかったですが、息子が小学生の頃に「支援カルテ」というファイルを作りましたね。当時(2010年ごろ)の教育委員会が旗振りをした取り組みで、行政と学校の運営側と学校の支援クラスで共有するという話でした。しかし、見ることができる人が多いので、プライバシー的にどうよ?という話になって、出す保護者の人も少なかったらしく、1年ほどでうやむやに…。
[く] リアルにつらい!でも良くある話かもしれませんね。
[寺] それから12年経ってますから、今ではかなり方法論や利用法もブラッシュアップされてきているのではないでしょうか。私は息子の時を最後に作っていませんが、2012以降はあちこちで見かけるようになりましたよ。
[く] 娘さんの時はどうだったんですか?
[寺] 娘が小学生の頃(2014年ごろ)には、支援クラスにはありましたね。支援の先生が保護者の方から聞き取って、あとは普段の様子を見ながら作っていたと思います。ただ、うちの娘は当時は支援クラスではなくて作ってないです。何か提出しないといけなかった時は、療育センターさんで作ってもらった「望ましい支援」という医師の一筆を使い回していました。
[く] 一般の学校で、障害に対して支援を受けようとするのは結構面倒くさいんですね。
[寺] 実は今年から、うちの息子の学校も、合理化とやらで、求める支援の内容を項目別に詳しく障害支援室に申請しないといけなくなったんですよね。今まではザックリ申請で、現場で臨機応変にやっていただいたのですが、今後ここに書いてないことは対応できない場合もあるとのことで「サービス低下も著しいわ!」って内心思ってます。
[く] 漏れてる漏れてる(笑)その申請って、具体的にどんなことを書くんですかね?
[寺] 障害名と、それに由来する症状を箇条書きします。感覚過敏があり、大きな音が聞こえると短期間の記憶が飛びますとか。それから具体的な求める支援の内容も書きます。「指示は口頭でなくメモか文書で」とか「タスクを作成する時間を与えて欲しい」とか「仕事をやって無さそうな時は声かけして欲しい」みたいな感じですね。結構膨大になりますよ。
[く] 特定のクエストがあるならシンプルに書けそうですけど、日常的な困りごとを全部記入するとしようとすると確かにとんでもなく多くなりそうです。
[寺] だから、学童などで「わたしのトリセツ」を作って下さいと言われた親御さんたちはずいぶん悩むわけですよ。
[く] 何かテンプレートというか参考になるものはないんですか?
[寺] いろいろありますが、恋愛がらみのものもワンサカ出てくるので探すのはちょっと大変かも(笑)私はこのサイトがわかりやすかったです。
[く] これは膨大だ(笑)いや、全部困りごととして分かるんですけど。
[寺] しかし、モコモコした服が苦手だったりというのは、かっちりした制服を着るように言わるという経験をしないと、他人に比べて苦手感が強いのかどうかも気がつかないですよね。「これが苦手なんだ」と発見するためにもなかなか試行錯誤が必要かなと思いました。
[く] そうなんですよね。困難とぶつかって初めて「あ、これに困ってたんだ」と気づくことって本当に多いです。気がついた頃には心身が壊れたりしてるんですが。
[寺] トリセツを作るまでに、いくつ「こんなこともできないの」を乗り越えないといけないのかと思うと、精神を病むのが先か、トリセツが完成するのが先かという感じになりそうで怖いですよね。
[く] まだ身も蓋もないことをおっしゃる(笑)でも、子供のことを書くのも大変ですけど、成人した発達障害者が自分で書くのもかなりしんどいと思いますよ。「自分ってこんなこともできないんだ」だとか「こんな失敗してきたな」といちいち思い出して咀嚼する必要がありますからね。というかしんどいです。
[寺] 更には「トリセツを渡されたけど、どうせいっちゅうの?」という話もよく聞きますね。 こちらからすると「サボりや言い訳じゃなくてこんな症状があります。ご留意ください。具合悪い時に仮病じゃないのう?って言われると後先考えずブチギレます。それはお互いのためにならないですよね?後、これがあると絶対できない仕事が主業務にあるという場合は事前にお知らせください。なんとかする方法を探しますし、無理だとわかったら、ちゃんと準備をしてからこの仕事やめます。」というぐらいの意味かと思いますが…。
[く] 障害がある当事者が、常に「相手に無理をさせてでもこの仕事がしたい」と思っているとは限らないという視点は持っていて欲しいところですよね。無理だと思ったらこちらも考えますよ、大人なんだから。という。
[寺] そう、お互いに不幸にならないために最初にすり合わせましょうと、その材料に出来れば良いなという視点ですよね。まあ、最初にトリセツを作ろうと言った人の意図がどこにあるかはわかんないけど(笑)
[く] またさらっと爆弾を入れるのやめ!(笑)編集する方の身にもなってくださいよ…。ただ、おっしゃる通りトリセツについては、作ると活用するはまた別ですよね。
[寺] 使うのは別の人ですからね〜。だからといって全く意味がないということもなくて、なんとなく「キツイツラい、助けろ!」とグルグル考えている人が、具体的に自分は何をして欲しいのか、何ならしてもらえそうなのか、自分で(か保護者が)整理できるというのは利点です。
妻のあおががてんかん再発とか体調の悪化とかで仕事をやめることになりました。障害者の自分で妻一人養うことはかなり厳しいのでコンテンツがオモシロかったらサポートしていただけると全裸で土下座マシンになります。