Facebookの「独占」は、誰の不利益なのか?
Facebookに独占禁止法の嫌疑が掛けられ、Instagramとの分離要求の話が浮上してきました。しかし、独占禁止法違反に違和感を持つ人も多いと思います。今回はその違和感を、今と昔の時代背景も加味し、整理してみたいと思います。
①「ハードウェア中心社会」と「ソフトウェア中心社会」は、別世界
昔のハードウェア中心の文脈での場合、競合を排除し、高値で価格調整されるのを防ぐために独占禁止法は、確かに有効だったと思います。高値で調整された場合、消費者はそれを買う以外、代替品がなく仕方なく、買わざるを得なかったからです。
ただ、今はソフトウェア中心の時代です。
例えば、Facebookを普通に使う分には特にお金は掛からないので、「価格調整」という概念がそもそもありません。Facebookがホワッツアップを買ったところで、Instagramと統合したままの状態で、ユーザーに昔のような価格面での不利益は生じないということです。
そのため、独占禁止法は「ハードウェア中心社会」では有効でしたが、無料でプロダクトを使うのが当たり前の「ソフトウェア中心社会」ではあまり納得感がないと言うことです。
② GAFAの何が問題か?
しかし、GAFAの問題点として、彼らが個人情報を好き勝手に集め、機械学習し、収益を上げる目的で使っている問題は確かにあると思います。
ただ、それは独占が問題というよりは個人情報保護の法律を強化すればいい話だと思います。
また、GAFAが史上稀に見るパンデミック下にも関わらず、業績を好調に伸ばしていることへの懲罰の側面も感じています。ただ、それならそれで、GAFA税のような新しい法人税を作れば良いと思います。(その結果本社がシンガポールなどに移転する可能性はありますが)
③「合法的暴力の独占」で圧倒されるGAFA
アメリカンドリームの国で、錆びついた武器を使い、やや無茶な論理で出る杭を叩き戻すような出来事が起きているように感じています。
そんな時に思い出すのが、マックス・ウェーバーが下記の本の中で「国家とは合法的暴力の独占である」と言っている言葉です。
『職業としての政治』
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どんなに正当な理由があろうとも私設武装組織は尽く違法で、暴動が怒れば、警察か軍隊が圧倒的戦力と治安維持という「錦の御旗」で、圧倒できるという仕組みです。
これは物理的な話ですが、GAFAの嫌疑の話のように法律でも同じことが言えます。
GAFAが築いた圧倒的なプラットフォームは、物理世界で言えば「施設武装組織」とも捉えられ、今回は「独占禁止法」という「錦の御旗」が掲げられ鎮圧され掛けている構図になります。
こういった公聴会や調査協力には当然会社中枢の相当のリソースを割いて対応するはずなので、新規プロダクトやサービスの話がスローダウンもしていると思いますし、それこそユーザーにとっての不利益とも受け取れます。
図らずも日本では進めていますが、アメリカに限らず昔の文脈で作られた全ての法律を見直すなど、新しい時代にあったフレームに刷新すべき時期に来ていると思います。