2021年6月2日(水)
通勤電車で5年以上ぶりに本棚から引っ張り出した大修館書店『スポーツ史講義』(稲垣正浩・谷釜了正編著)を開く。1995年発刊の古いアカデミック論文集。目次を見るだけで改めて興味をそそられますね。その中の中房敏朗の「陸上競技のトラックはなぜ左まわりなのか」を読む。1913(大正2)年に国際陸上連盟が設立された際に左まわりがルール化され定着したのか。その理由として心臓が左にあるとか男性の睾丸が左の方の重いとか手の右利きが多く踏み切り足がおおむね左足の人が多いとか運動生理学的俗説が聞かれるがランニングが苦手な筆者はこれを一蹴。自分は違うからと。カーブをカーブと感じない(気分は直線)し、睾丸なども関係しないと・笑。ただイングランドでは今でも右まわり走法の習慣があるとかで運動生理学が決め手と言うよりも長い歴史の中で選択されたものとしている。この「左まわり文化説」を「ランナーの利き手」と「観衆の視線」から考察しているが前者は少々厳しい気がする。後者は中世の書物やギリシャの壺絵から欧米人は左から右への視線の動きをすぐれて好むといえると結論付けていて一定の納得は得られた。それより結びの章の競馬は右まわりが多い点に触れているところが面白い。これは観衆が競馬場の柵の中(競技場ではフィールド内)にいるというもの。遠い昔はスタンドではなく、内側から見ることが普通だったのが分かってこれはこれで面白いと思う。