写真業界で「仕事ができる人」とはどんな人?
仕事ができる人って、いったいどういう人のことを言うのでしょうか?
写真業界では、写真が上手な人というのはフィーチャーされやすく、写真というアウトプットも目にするのでわかりやすいですが、仕事ができる人という視点であまり語られることがないので、
今日は、フォトグラファーにわかりやすく、Lightrooomのプリセットを題材に扱いながら「仕事ができる人」を説明していきます。
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とある会社で、現在使用しているLightroomのプリセットがあまりいけてないという問題を抱えていたとします。ぱっと見おしゃれだけど、シーンによっては黒が潰れてしまったり、暗く沈んで見えたり、納品レベルに達しないカットを生み出してしまうとあって、会社の課題の一つです。
もしここにAさんという、いわゆる「仕事ができる人」がいたら、どんな行動を起こすでしょうか。
Aさんはまず、自分の写真もこのプリセットを使って納品されるのだから、これは他人事じゃないなと思い、自分でこれを改善したいと考えます。
また別の角度で見れば、自分が撮影する写真という視点以外にも、所属しているチームの写真がこのプリセットで世の中に出ていくので、やはりこれは自分ごととして改善しなければならないと思い、頼まれたわけではないけど自分でやってみようと決断します。
Aさんが自分でこれを改善したいと上長に伝えたところ、上長はぜひお願いしたいと一つ返事でOKを出し、さらにサポートが必要ならいつでも相談してくれという言葉をかけてくれました。
上長の了承を得たAさんは、まず現状の何が問題かを正確に検証します。
複数名のフォトグラファーにヒアリングをしたり、品質管理の責任者に質問したりして、何に困っていて、本当はどうしたいかを突き止めます。
その次に、日本だけでなく海外の既製品のプリセットを100個ほど見て、どのような商品があるかを調べます。
無料のものだけでなく、人気のフォトグラファーが販売しているものや、アルバム会社のウェブサイトにバナー広告がある会社のものなど、人気がありそうなものを片っ端から探しまくり、なるべく質の高そうなものを100個ピックアップします。
その次に、実際の写真に当てはめたらどうなるかを確認するため、10個のプリセットを購入したいと上長に相談し、5万円の予算を確保します(だいたい1個5000円くらいが相場なので)。
そして実際に10個のプリセットを購入し、それぞれの違いや特性を把握。クッポの写真に当てはめ、今までの問題が解決されるかを確認します。
その後、特に良い3つを選定。それぞれの違いを明らかにしながら上長に提案。
Aさんのイチオシは、アメリカで活躍するウェディングフォトグラファーが販売しているものでした。それによって黒が沈む問題が解決されるほか、事前に品質管理の責任者が話していたクッポの写真の理想像にも近づきます。
他に2つ用意したのは、その会社の写真であればこういうのも面白いかもしれないという可能性を感じたものや、もし自分が理想の色の認識を誤って把握していてイチオシがちょっと違った方向だった場合のためです。
結果的にイチオシがそのまま採用され、さまざまな写真で検証したのち、翌月からAさんの会社の写真はすべて新しいプリセットで運用されることになりました。
写真の質が上がり、フォトグラファーはもちろん、お客様からも喜びの声をいただくことが増えました。
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もしAさんがいなかった場合、このチームの写真はおそらくずっと過去のプリセットのまま運用されていたでしょう。
写真の質は上がらずお客様からの評判もそこそこ、社内で愚痴る人が増えてチームの士気も下がります。
多くの人が、問題の認識は行なっています。しかし、その解決に向けた行動を起こせる人は多くありません。同じ問題を抱える人同士で「あれはよくないよね」「自分はあれより良いものを知っている」などと話している方がよっぽど楽だからです。
一つの課題を解決するためには、さまざまなビジネススキルやスタンスが必要です。
問題を正しく把握する論理的思考力。
何が写真を暗く沈むように見せているかを特定する本質思考力。
さまざまな事実から、たぶんポートラ系が合うのではないかと考え、ポートラっぽい色のプリセットを中心に検証する仮説。
上長への相談から最終的なプレゼンまでの段階的なプロセス。
自分ごととして捉える当事者意識。
100個のプリセットを調べる継続的な努力。
できないかもしれないことに挑戦するチャレンジ精神。
ここではLightroomプリセットの例を挙げましたが、上記のような仕事ができる人は、どんな分野でもどんな問題でも常に成果を上げ続けます。
だからどんどん上司の信頼を得ていき、Aさんはいつか新スタジオの立ち上げプロジェクトの責任者になったり、もっと将来的にはその会社の事業自体の舵取りを任されるかもしれません(その際には、より多くの人が関わるためビジネススキルとして「ビジョンを打ち出す力」や「リーダーシップ」なども求められるでしょう)
(自分が本当に表現したいものを最優先せず時代に求められているものを作るのであればある程度再現性のあるものだと思いますがそれはさておき)天才と呼ばれるような写真家になるのはとても難しく、方法論も確立されていないですが、
写真ビジネス領域において「仕事ができる人」になるには、どのようなビジネススキルが必要か、どのような行動ができるスタンスを持っているべきか、かなり明確で、誰にでもチャンスがあります。
そして、自分の写真が良くないということを問題として捉えたときに、どうしたら改善していけるかは、感性によるものではなく、上記のようなビジネススキルとスタンスを使うので、仕事ができる人の方が写真のスキルアップも早いのです。
フォトグラファーだけが特別で感性やアートが最も大事などと特別視したり、写真を撮ることと仕事での問題解決が完全に別だと切り分けたりせず、
今まであまり意識してこなかった人も、仕事ができるようになるという観点において努力すると、パッと視界が開けるかもしれません。
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