ライゼン通りのお針子さん~新米店長奮闘記19
「お~。アイリスさん。今日も元気そうですネ」
「ミュゥさん。いらっしゃいませ」
お昼を回った頃ミュゥが来店する。笑顔で近寄ってくる彼女へとにこやかに対応した。
「今日は如何されたんですか」
「アイリスさんの顔を見に来ました。あなたを見ていると私元気になりまス。それからアイリスさんのお店宣伝しました。そしたら是非お店の場所教えてくれとこちらの方連れてきましタ」
アイリスが尋ねると彼女はそう言って背後にいるおばあさんを見やる。
「今度孫の誕生日でね。可愛いお洋服を仕立ててもらおうと思ってのぅ」
「分かりました。どのようにお仕立てしましょうか」
おばあさんの依頼を受けるとお客は「出来上がるのが楽しみだ」と言って店を出ていった。
「私もまた衣装作ってくださイ。それを着てこのお店宣伝します」
「あははっ……」
ミュゥの言葉に苦笑を零すと小さく頷く。
そうしてこの日も慌ただしい一日となり、イクトが帰ってくると今日の報告をして家へと帰った。
それから一週間が経ちジャスティンが依頼した品を取りに来る日となる。
「失礼する」
「あ、ジャスティンさんいらっしゃいませ」
お店の扉が開かれ彼が入店するとアイリスは笑顔で出迎えた。
「この前頼んだ服を取りに来た」
「はい、こちらになります」
「これはまた予想以上の素晴らしい出来だな。これなら王女様の護衛もしっかり勤めれそうだ」
「喜んで頂けて嬉しいです」
依頼した品を手に取って細部まで確認したジャスティンが笑顔で言う。彼女もまた自分の作った服を喜んでもらえて嬉しそうに笑った。
「ああ。また何かあったらよろしく頼む。それからここにもし王女様がいらしたら俺に教えてくれ。今度こそご忠告申し上げねばならないからな……」
「はい。王女様がいらっしゃるかどうかは分かりませんが、もしいらっしゃいましたらジャスティンさんが心配していたことお伝えいたしますね」
「ああ。それでは失礼する」
彼の言葉にアイリスは了承するも王女様がいらしゃるなんてことありはしないだろうと思う。
お会計をすませたジャスティンがそう言うと店を出ていった。
それからその日はお客様の対応をしながら依頼された服を作ったりして過ごす。