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絵本「おなかのなかのあかちゃんへ」絵を描くときに考えてたこと


絵を担当させていただいた、
6月に発売された絵本「おなかのなかのあかちゃんへ」(こがようこ作/岩崎書店)の制作時の話を、どこかでまとめたいなと思い、書き残そうと思います。


もともと、この絵本は岩崎書店社内の方の立案で始まった企画で

「これからお父さんお母さんになる人のための絵本を作りたい!」とかなり以前から希望していらして、

今回はその念願が叶った形なのだそうでした。



作者のこがようこさんからテキストが送られてきて、それを元にラフを描くのですが、

まだ絵のない文章には、赤ちゃんが生まれるのを心から楽しみにして、

「生まれてきたら一緒に何しようか」「何を見よう」「どこへ行こう」と

希望とわくわくがつまった文章が書かれていました。


明るい文章が続いた後に、ふと妊娠期の不安を描いたシーンが挟まります。

こがさんと編集さんは、ここを入れるか否かを迷われたそうですが、
私はこの部分にすごく共感しました。


自分の妊娠期を振り返ると、

今思えば「あんなに不安になることなかったなぁ」と思えるけど、

悩みや不安って、その渦中にいる時期は、
そんな余裕持てないことがほとんどで。

特に妊娠初期は毎日泣いていたような気がします。不安で。


親になる覚悟をするのにも、トツキトオカは必要な時間でした。

息子が生まれたあとは、最初の半年の記憶がほとんどないくらい、主人と一緒に必死の毎日でした。



絵をご依頼いただいた時は、息子がちょうど生後6ヶ月になったばかりの頃で、

うまれてすぐは必死過ぎてよく分からなかったけど、

『かわいいなぁ』とようやくしみじみ実感出来るようになってきた(くらいの余裕が出てきた)時期でした。


はじめにお話を聞いた時は、すごくデリケートなテーマだと思っていて、

インターネットSNS時代にいろいろ見聞きしてると、

子供を生むことって、なかなかに繊細な話題だと肌で感じていたので、

そんな時世で、ただ「赤ちゃん楽しみだね!」とひたすらに明るいお話だったとしたら、

たぶんお引き受け出来なかったんじゃないかと思っています。


いろいろな状況下の方がいるし、

私自身も妊娠期、そういう明るい感情だけではいられないタイプだったので、もしそういうお話だったとしたら、少なくとも私は絵を描くのに適任ではないと思った。


でもこのお話は、赤ちゃんを楽しみにしつつも、不安な心にも寄り添ってくれて、それでも大丈夫だよと背中を撫でてくれるような温かい眼差しに溢れていました。


絵を描く時に、特に大切にしたことは、

どのページにも必ずお父さんを描くことでした。

(↑の絵はかもめの親子です)


赤ちゃんが宿るのはお母さんの身体ではあるのだけど、
出産自体は必ず2人事として扱わなきゃいけないと思った。

テキストでは語られていないことも、絵で忍ばせることが出来るので、絵本って面白いです。それとあとは、実用書っぽくならないようにすること。


読んでくださった方のお話を聞くと、特に何も言わなくても『お父さんが描いてあって嬉しかったです』と言ってくださった方がいらして、とても嬉しかったです。


私の母と、2児の母をしてる妹もこの絵本を買って読んでくれて、ふたりとも涙したことを教えてくれました。

母が私を産んだのなんて、もう30うん年以上前のことになるのだけど、それでも刺さるものがあったようでした。


また別の読者の方のご感想には、
『自分はこう思われて生まれてきたのか、と思えた』とか、
『娘が成人間近で、まともに会話しなくなり、もうあまり可愛く思えなくなってたけど、生まれた頃の嬉しかった気持ちを思い出した』とか、


はじめは「これからお父さんお母さんになる方のために」という思いで作っていたけど、その限りではないんだなと嬉しく思うことが出来ています。


手にとってくださった皆さん、この場を借りて本当にありがとうございます。


絵本はAmazonなどのネット書店や、各書店で現在発売中です。


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