レビュー「大豆田とわ子と三人の元夫」第1話
脚本家 坂元裕二さんの作品の中でも私が1番好きな本作品。(今のところ(笑))
岡本太郎の太陽の塔さながら、好きな気持ちが天井を突き抜けてズンズン空へ伸びていく。
この作品の魅力を伝えきる筆力はないのだけれど、特に心が動いた部分を中心に書いてみたいと思う。
「第1話 3回結婚して3回離婚した。でも私は幸せを諦めない」
オープニングは、フランスっぽいおしゃれで甘美な音楽で始まる。
大豆田とわ子という人物はおしゃれさとダサさの両方を身にまとって、ラジオ体操に出かける。
のっけから親近感を湧かせる。
母の葬儀と社長就任の日が重なった…人生一忙しい日
とわ子の母の四十九日がもうすぐだという。
◯ワインを嗜むかごめととわ子
かごめ「離婚ていうのは、自分の人生に嘘をつかなかったっていう証拠だよ」
とわ子「さすが、いいワイン飲むといいこと言うね」
自虐的なとわ子に対して、真っ直ぐな言葉で気持ちを伝えるかごめ。
なぜ、とわ子とかごめが親友同士(気持ちは家族)なのか、その理由を覗かせるシーンでもある。
◯とわ子と八作のシーン
八作の膝を枕にして寝転びながら、徐々に気持ちを吐露していくとわ子。
束の間の休息。
とわ子の母が亡くなったのを知った八作。
八作「そっか。。ありがとう、教えてくれて」「ごめん、知らなくて」
→あなたが大きな悲しみを抱えているのに、支えてあげられなくてごめんね、この間はそっけなくしてごめんねという意味だろう。
八作はとわ子の母にこう言われたことを回想する。
「この子は強がりだから。どうか一生大事にしてやって」
社長就任はキャリアとしても華やかだれど、それは孤独の第一歩。
何かを得る代わりに何かを捨てる。
社長というポジションを得ることで、一般の社員という平穏な立場を捨てる。
また、母親の死の直後で既に大きな「喪失」をしている。
そんな大きな出来事が重なり、とわ子は大きな心労を抱えている。
抱えているけれど、簡単に気持ちを放出できない辛さ。
八作にはやっと言えたのだ。
そしてそれを受け止めてくれた元夫である。
全話通じて言えるのだが、この物語はあえて「号泣」などのお涙頂戴場面を克明に描かないことにより、視聴者の想像力を掻き立てている。
ワインの味ではなく、香りを書くように。
そこで香りを感じた人は、いつの間にかグラスに注がれたワインを味わい満たされた気分になるのだ。