女性にとって生活保護制度は、家族の呪縛から自由になり、社会の一員になるパスポート!
DVや虐待、ハラスメントにあい、住まいを失う、お金がない、頼る人がいない、となったときに助けてくれるのが生活保護制度です。生活保護受給者というと、特別な人、自分の力で生きられない人と一般的には思われがちですが、本当にそうなのでしょうか?
Jikkaに支援を求めてくる女性たちは、心身の疲労や疾患のために働くことが困難になり、蓄えも尽きて次の生活再建が図れない方も多くいらっしゃいます。それは本人の努力が足りないということではなく、「努力のしようがない」ということなのです。まずは安心して休むことが必要です。しっかり休んで力を蓄えた後、また働いて自活すればよい、そのための支えが生活保護です。
女性は夫や親に依存していればいい?
しかし、そのように考えることができない女性たちが多くいるのも事実です。また世間の目もそうです。なぜかというと、女性が自立して生きることが前提になっていない社会構造があるからです。女性は経済力がなくても、夫や親に依存していれば何とかなるという考え方が根強くあります。ではそれが生活保護より優れている制度なのかといえば、私はけっしてそうは思いません。家事労働を担っていても、給与が払われるわけでもなく、評価は夫や親からの恣意的、主観的なものに過ぎず、経験や実績としての社会的な評価は得られません。それは「家族」に依存する生き方なのですが、社会構造的にそれが当たり前とされるので、女性たちはそこにすがらざるを得ません。
生活保護を受けるのは恥ずかしいけど、夫や親に食べさせてもらうのは恥ずかしくないという考え方はどこからくるのでしょう。それは今も残る「家制度」「家父長制度」による日本特有の家族主義から、女性が家の付属物のように扱われ続けてきたことからでしょう。そこには根深い性別役割分業の考え方が宿っています。女性が生活保護を選ばなければ、結局は誰かに依存して生きることを選ぶということになってしまいます。
堂々と生活保護制度を活用してよい
人間は社会的存在です。「自分の生き方は自分で決めてよいのですよ」というためには、それを保障する社会制度がない限り、嘘になります。家族がいようといまいと、自由に生きられる社会を保障する制度として、女性たちはもっと生活保護をうまく使って人生のやり直しをしていってよいのです。
人はいつ何時生活困窮に陥るかわかりません。きわめて不安定な社会状況の中で、何が起きてもおかしくない時代です。自助努力だけではどうにもならないこともたくさんあります。だからこそ私たちには、何が起きても絶望せずに再起できるサポートが必要なのです。生活保護制度を活用し、活きた制度にしていかなくてはなりません。
(2020年「Jikkaからのお便り」春号より)
Jikka 責任者 遠藤良子
※トップ画像はJikka利用者さんが描いたイラストです。