『ファクトフルネス』要約

世界中で多くの人々が、事実を誤認している。現在、低所得国に暮らす女子が初等教育を修了する割合は約60%である。しかし世界の9割の人は、この割合を約20%と認識している。同様に、世界で最も多くの人が住んでいるのは、中所得国だ。これに対しても、低所得国と答える人が大半である。
なぜこの様な認識齟齬が発生するのだろうか。本書では、人間に備わる10の本能を分析し、その理由を解明している。

我々には、世界は先進国と後進国の2つに分断されていると認識している。この様な事実を単純化する思考が、分断本能だ。だが、これは事実と異なる。世界の国々を、1日の所得が2$以下、8$以下、32$以下、32ドル以上と分けると、それぞれ、10億人、30億人、20億人、10億人の分布となる。世界を単純に2つに分断する事は出来ないのだ。

世界は悪くなっていると考えるのが、ネガティブ本能だ。危険でない事を恐ろしいと思い込む、恐怖本能と併せて、身近で発見出来るだろう。ニュースは良い事より、極端な悪い事を報道する。それが誤認を生んでいる。

人は、グラフは直線になるという直線本能を持っている。実際のデータで直線のグラフは寧ろ珍しく、乗数、S字カーブ、コブ型等の方が多い。

目の前の数字のみが重要と思い込む、過大視本能は、真実の理解の妨げとなる。実際、1種類の数字だけでは物事を語れない。比較データがあって始めて建設的な議論が可能となる。

1つの事例が全てに当てはまると思うパターン化本能、全ての物事は決まっていると思う、宿命本能は、歴史や他国を論じる際によく目にする。アフリカはずっと後進国だ、イスラム教の暴力性は無くならない、そうした考えを変えない人は少なくない。

物事の解決を焦るあまり、事象を無理矢理単純化させたり、犯人探しを始めるケースも、単純化本能、犯人探し本能、焦り本能に寄るものだ。当然、これらは問題の解決に役立つどころか、時には問題を複雑化させる。

人間は、上述の10の本能を備えており、これらは事実を間違えて認識させている。この事を常に意識する事で、真実の世界を見る事ができるのだ。

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