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Photo by
mitsukisora
祭り
主人の転勤で東北にいたときの話。
長女が幼稚園に入る前の年の夏。
夕方、まだ明るい時間。いつものように買い物を終え、社宅へ戻る車中でのこと。
坂を下っている時に娘が言った。
「おまつりだー。いっぱいひとがいるね。◯◯(娘の名前)もいくー」
「はあ?」
と思いながら、周りを見てハッとした。
ゆるい下り坂の先は左カーブになっているのだが、そのカーブになっている上に視線を向けると、そこには段々になったお墓があった。
引っ越してきてから何度となく通った道。でも私は今までここにお墓があるのは気がつかなかった。
殆どの墓に花がお供えしてあるのが見える。でも人は誰もいない。
ちょうどお盆の時期だった。
「誰もいないよ」
私は言った。
「いっぱいいるよ。たのしいんだよ」
娘は笑っている。
「そっかー。楽しそうなんだ。お家に帰れるから嬉しいんだね」
そう言いながら、ひと気のない墓場を横目に私はゆるいカーブを曲がって家路を急いだ。