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漫文駅伝『三浦マイルドの田舎暮らし』 第3回 三浦マイルド

前回に引き続き、島で出会った僧侶、大田さんについて書きます。

最初は「何だこの奇天烈な坊主は」と警戒して距離を置いていたのですが、現在では親交を深め、感謝してもしきれないほど、助けていただいてます。

田舎で生きていく上での必需品は車です。
コンビニに行くのに、私の家からだと峠を一つ越さなくてはなりません。
歩くと20分かかります。

最寄りのスーパーまで行くには、徒歩で1時間です。

冷凍食品を買って帰ろうもんなら、家に着く頃には解凍されています。

バスの本数も少ない為、フェリーに乗って、呉の街まで買い物に出向く事もありました。
フェリー代は片道450円、
結構バカにならない金額です。

ある日、買い物に行くのに、車を出してもらえないかとお願いしたところ、快く応じてくださり、帰り際「必要あれば、いつでも車を出しますよ」と仏様の様な事を仰るので、私も甘えに甘えて、今では買い物以外でも、役所や病院に行く時も、車に乗せてもらっています。

大田さんは、私の生活を支える基盤となりました。もはやインフラです。
電気水道ガス大田です。

3月末、静岡県沼津市にある劇場の出番が入り、所属する吉本興業から送られてきた新幹線のチケットを見ると、広島駅を7時10分発でした。

島から広島港に行く始発は6時16分、港に到着は6時44分です。

広島港から広島駅まではタクシーで20分前後。

7時10分の新幹線に乗れるかは、かなり微妙です。

思い切って、大田さんに相談しました。
島から広島駅まで車で送ってもらえないかと。

「いいですよ、ドライブを楽しみましょう」
と、早朝5時に私の家の前まで車で迎えに来てくれました。

世の中には他人に対し、こんなに慈悲を施してくれる方がいるのかと、いたく感激しました。

それからというもの、船がない時間帯だけでなく、広島県内で電車が通ってない様な僻地に行く時や、広島空港への送り迎えも大田さんにしていただいております。

これだけ車を運転してもらっていると、大田さんが、自分の弟子だと錯覚してしまう時があります。

私も元来、つけ上がる気質なので気をつけねばなりません。

この大田さん、本当に心根が優しい方なのですが、気性が荒い一面もあります。

電話でも、よく誰かと言いあいになっていますし、日本各地に敵対してる坊主がいるらしいです。

「坊主同士て、めちゃくちゃ喧嘩するんですよ」と彼は嘯きます。

以前、説法した後に、同期の僧侶に
「お前の話はつまらんのー。」と言われ、つかみ合いの喧嘩になったらしいです。

お坊さんのエピソードとはとても思えません。

私ら芸人が「あいつのネタはダメだ」と陰口をたたく様に、お坊さんも「あいつの説法は良くない」とか、そんな話をするみたいです。

大田さん曰く、坊主なのに説法で、お経の話が出来ないやつはダメらしいです。

先日も喫茶店で仏教の話をしていたら、急にスイッチが入り
「坊主が、最近物忘れが激しくなりまして〜とか、そんな小話してどうするんじゃ!綾小路きみまろか!?坊主ならお経の話せんかい!」
と激昂しておりました。

彼は坊主とは思えない位に好戦的なのです。

私に対しても、よく喧嘩をする様にけしかけてきます。

以前、私がXに広島よしもとを挑発する様なポストをした次の日に
「マイルドさん、まだお怒りでしたら、劇場までお送りしますので、暴れてきますか?」と言うのです。

Xで強気な奴はXでしか強気になれない。

こんな事、世の中の常識でしょう。

ネット弁慶をリアルな戦いの場に連れて行こうとするとは、正気の沙汰ではありません。

こんな事もありました。

新幹線の最終で広島駅に到着し、もう島に帰れる交通手段が車しかないので、いつものように迎えに来てもらいました。

飲み物を買う為に、コンビニに寄った時、事件は起こりました。

店の前にたむろしてた小僧達に絡まれたのです。

「おい、三浦マイルド」と呼ばれ、振り向くと、5〜6人が、缶ビールを片手に持ち酔っ払ってる様子でした。

私は無視して入店しました。

すると、小僧達は店の中まで入ってきて、私の顔を見て
「やっぱ三浦マイルドじゃ」と確認をしました。

その間も、ずっと無視です。

私と大田さんは、買い物を済ませ、店の外に出ると小僧の一人が「マイルドフラーッシュ!」と叫びました。

私は目もくれず、車に乗りこみました。

最大級に気分を害した私は、即刻、最寄りの警察署を調べ、電話で通報しました。

「今、◯◯町の△▽で買い物したんですが、店の前で酔っ払いに絡まれまして、、
喧嘩売られたとかではないんですが、凄く挑発的でして、、
身の危険も感じました。
未成年ぽい子もいたんで、見に行ってもらえますか?」

電話を切り、ほんの少し溜飲が下がった私に大田さんは、こう言い放ちました。

「今のマイルドさんは、見たくなかったです。マイルドさんは芸風的に、何じゃオラァ!て、その場でブチギレなきゃいかんでしょ。」

いや、そんな社会人おるか!
私、一応テレビに出た事もある芸人ですよ。

闇バイトしたり、特殊詐欺やってるダークサイドの人間じゃないんですわ。

「いや、そんな事を言うたら喧嘩なりますやん」

となだめたら、

「そうなったら、僕もいきますよ!」

などと80年代のヤンキー漫画みたいな事を言うんです。

血の気が多いのか、何か鬱憤が溜まっているのか、、

私も友人であり恩人である彼の将来が心配なので、今度「心が軽くなるブッダの言葉」という書籍を送ろうと思います。

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