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「YUN–ROCKIN'ON WORLD」(ユンボ安藤 自作自演インタビュー)不眠ビジネスという生き方の章
この作品はあらゆる並行世界(パラレルワールド)において、各ジャンルで世界的成功を収めてきた希代の天才、奇跡のタイムスリーパー、ユンボ安藤氏のロングインタビューである。
今回お送りする並行世界は、自称『20年間眠らない男』として突如として世に現れ、その特異な体質、物珍しさ、超人見たさから全世界から注目を浴び、医学界はもちろん、各国テレビを始め各メディアに引っ張りだこ、世界的な人気者となり、一躍、時の人に。また睡魔と戦い勉強をしなければならない受験生たちからは、『眠らない男』は縁起が良いとして、ユンボ氏関連グッズは、合格祈願お守りを始め、シャープペンシル、トートバッグ、アクリルスタンド、ユンボキティ、ユンボチロルチョコ等、どれも爆発的売り上げを記録した。
そして不眠という体質を生かし『パーティーを何件もハシゴできる男』として、忘年会、新年会シーズンには営業依頼が殺到。また、時差ボケ睡眠要らずということもあり、奇跡超人をひと目見たいという世界のパーティー好きセレブからも招待状が多数舞い込み、その経済的成功から自らもセレブの仲間入りになるものの、2020年。自身のYouTubeチャンネルにおいて、本人がMCとして24時間×7日間出ずっぱりで放送された生配信「ネオ24時間テレビ 怒涛の7DAYSだよ〜ん!もしくはびろ〜ん!」において録画放送疑惑が浮上。初めはトイレから帰ってくると急に元気になっている様子から覚醒剤使用疑惑も流れたが、元YouTubeチャンネル男性スタッフが先日、録画放送及びユンボ氏からの性加害を週刊誌上で告発した。果たして不眠はリアルか、ビジネスか?そんな渦中の男に迫るインタビューという名の『新・世界史』となる。
□インタビュアー(以下●)
すみません、ユンボさん遅れました。
□ユンボ安藤(以下○)
遅いよ、君。
退屈で僕は眠っちゃうとこだったよ。
Goo Goo…なんてね。
●えっ?
○ジョークだよ、ジョーク!寝ない寝ない!
僕は世界一眠らない男だよ。
眠らないことで名誉を得た人間だよ。
これは僕みたいな『眠らない男』のオープニングジョークさ。
●ああそうですか。
○セレブが集まるリッツ・パーティーでは鉄板ジョークですよ。
●セレブはリッツ・パーティーなんかしないのでは…
○何を言ってるんだい君は。しますよ!
五十日(ごとおび)には必ずしますよ。
警察の取り締まりが多いと言われる五十日には必ずしますよ。
●でもセレブですよ。リッツって。
○だから、リッツの上に乗っかるものが庶民とは違うんだよ、君。
●なるほど、キャビアとか?
○違うよ。塩辛や、酒盗や、とびっこだよ。
溢れるほど塩辛や酒盗を乗せて。一心不乱にね。
時にはサンドして、もしくはダブルで。
誕生月にはトリプルもいいかもしれない。
そんで仕上げに、とびっこでコーティングですよ。
●はぁ。
○第一、キャビアなんてバッド・ルッキングだろ。
真っ黒でおっかねえしよ。
○とびっこのあの光り輝くケミカル・オレンジがパーティーを盛り上げるんだよ。
あの存在こそがパーティー・メーカーですよ。
●はぁ。
○そんで散々食って、翌日、痛風で足を引きずるまでが、本物のセレブの所作なんですな。
●…
○洋の東西を問わずね。
●はぁそうなんですか。
○何も知らないな君は。
●いや、別にそれは知らなくても…
○とにかく、何が言いたいかと言うと、セレブもリッツが大好きなんだ。お菓子が大好きなんだ。
僕みたいな成功者は良いもの、美味いものを今までたくさん食べてきたから、結局そこに帰るんですよ。
●…
○放火魔が現場に戻るように。
●なんですか、それ。
喩え合ってますか?
○そうだ、フランスのセレブたちの合言葉を知ってるかい?
●いえ。
○「シェラスコよりナビスコ、ホルモンよりブルボン」
この機会に覚えておきなさい。
●ええ。
○何の話してたっけ?
●オープニングジョークの話から、リッツがなんちゃらかんちゃらになりました。
○そうか。
まあ他にオープニングジョークのパターンとしては、例えば遅刻した時なんか僕のような眠らない男としては
「寝違えちゃって」とか
「二度寝にタービンががかかっちゃって」とか
「スヌーズとロマンチックが止まらなくて」とか
「野良猫と寝床の奪い合いを白昼…
●もういいです!もういいです!
オープニングジョークはもういいです。
とにかく、取材に遅れてすみませんでした。
○大丈夫、大丈夫!
ここの、山羊の頭のスープは絶品だからね。
●ドトールです。そんなメニューは無いです。
○シェフ呼んでくれる?
●いないです。おそらく店長とバイトしかいないです。
ユンボさん、本日伺った理由はですね、今、世間に良からぬ噂が流れてるじゃないですか。
○はいはい。
本当は山羊じゃなくて羊の頭だと。
●そんなんじゃないです。そんなメニューも無いです。
噂というのは、あなた個人の良からぬ噂です。
○あぁはいはい。あれね。
隣人トラブルでしょ?
●全然、違います。
○もうYahoo!ニュースになってた?
●全然なってないです。
○瓦版?
●刷ってないです。
まあ、一応聞きますが、何ですかその隣人トラブルって?
○いやね、僕は302号室に住んでるんだけどね、真夜中に303号室の隣人がピアノを弾いてるから、僕は自室からトランペットを吹いてジャズセッションを始めたんだよね。良かれと思って。
●それで揉めたと。
○そうそう。
●でも元々は303号室がピアノを弾いていたのが原因ですよね。
○違うんだ。揉めたのは301号室の住人となんだ。
彼の部屋からは僕のトランペットの爆音しか聴こえないからね。
しかも初心者の不快な怪鳥音がさ。
●…
○地獄だったろうね。
DIYで地獄を作っちゃったからね。
●…
○翌朝に「眠れない!」なんて怒鳴りこんで来てさ。
●そりゃそうでしょ。
○眠れないなんて言うから、「オレもオレも」なんて言って最初は握手を求めたんだけどね。
●眠れない理由が違うので。
○とにかく朝から玄関のドアをバンバンバンバン叩くから、思わず飛び起きたよ。
●なんて言いました今!
飛び起きた?あなたホントは眠っていますよね!
やっぱり眠っていますね。不眠なんて嘘ですよね。
世間を騙し続けてきましたよね。
もうバレてますから。
○かつて、ヨーロッパの社交界にはこういうジョークがありまし…
●誤魔化すな!そんなんで誤魔化せるか!
今日、伺った理由はまさにそれです。
今、ワイドショーや雑誌で散々取り上げられているあなたへの疑惑の数々、証言の数々。読み上げます。
○じゃあ僕MCやります。
●いらねえよ!
○どうぞ!
●どうぞじゃねえよ!
□行きつけの床屋さんの証言
「彼には目ヤニが付いていました。はい毎回です」
□中古レコード屋店員の証言
「いびきを録音した音源が高値で取引されています」
□同級生の証言
「学生時代のあだ名は『ねぼすけ』」
□電車で目撃した方の証言
「山手線で眠る姿を見た。しかもシルバーシート。許せない」
□元彼女の証言
「寝言の方がおもしろい」
□宅配業者の証言
「パジャマ、寝ぐせ、大あくび。確定です」
□キティちゃんファンの証言
「サンリオ史上最低のコラボです」
□母親の証言
「寝る子は育つ」
□忘年会の営業にユンボ氏を呼んだ会社員の証言
「ひとつもテーブルマジックが成功しなかった」
□パーティーに招待したドバイのセレブの証言
「アイツニドネモシテタヨ」
○そろそろ時間だ。行きますね。
●逃げるのか?
○仕事だよ、しょうがないだろ。
今から303号室さんとライブなんだ。
あれから一緒にジャズバンドを始めてね。
来る?
●行かねえよ!
○さっきから証言?告発?
こういう、でっちあげには僕も悩まされているんだよ!
●事実です。
○毎日、このようにマスコミに追いかけられるし。
いい加減にしてくれ!
●あなたが蒔いた種です。
○どこにでもカメラマンはいるし。
●当然です。
○昨日なんか夢にまで出てきたぞ!
●やっぱ寝てんじゃん!
○うん?
※表紙の写真はジャズライブ打ち上げ後、ゴキゲンで酔っ払い路上で眠るユンボ氏のスクープ写真である。
「YUN–ROCKIN'ON WORLD」
【不眠ビジネスという生き方の章】完