音楽を文脈で聴く〜今夜もガビガビ編〜
音楽を文脈で聴く人はほぼいなくなった…
つい最近、落合陽一氏が語った言葉。
なるほどね〜
ジャンルやアーティストやムーブメントにこだわって、その音楽がどんな背景で生まれて、どんな風に時代の文化になっていったのか…
はたまた、その音楽を生み出したバンドがどうやって生まれたのか、どう推移し進展していったのか…
そのミュージシャンの生い立ちやものの見方、どんな人物と交流があったのか、考え方、志向など…
単純に音楽だけに耳を傾けるのではなく、どうしてそういうサウンドになったのか、ビートが生まれた理由を探り、好きな音楽を掘り下げてそこにストーリーを見出してゆく面白さに興味を持つ人は少なくなったということだ。
文学や美術で言えば評論家不在、不必要ということだろう。
思い返してみれば、私の若い頃は、音楽好きの人は必ずと言っていいほど、音楽を文脈で聴いていた。
好きなアーティストのレコードやCDはずらりと揃えているのが当たり前だった。
「〇〇の曲、昨夜ラジオで聴いたんだけど、結構いいよな。他の曲も聴きたいんだけどオススメない?」 「ああ、〇〇だったら隣のクラスの〇〇が好きだから、あいつに聞いた方がいいよ。多分アルバムも全部持ってると思うよ」
という会話は日常茶飯事。
「君、音楽は好き?」
「ああ、音楽、好きだよ」
「へえ..どんなの聴くの?」
「ああ、なんでも聴くよ。なんでも好きだから」
「特に好きなジャンルとか、アーティストとかは?」
「別に、特にはないけど、気に入ったもんならなんでも聴くよ」
「ふ〜ん…」『なあんだ…別に好きじゃねえんだ…』
という結論になってしまう。
要するに今とは『好き』の定義が違うのだ。
(だからいいという話ではないんですよ)
私はそういう時代の人間なので、気に入った音楽はついつい文脈で聴いてしまう。
断続的に音楽活動もやっているので、周囲にもそういう人物も多い(ほとんどが40代以上の人たちだが)。
最近になって、『今夜もガビガビ』という小さな小さなCSTV番組(東急ケーブルチャンネル)に縁あってたまに参加している。
漫画『Beck』のモデルと言われるバッキンガム宮殿の千葉大輔氏が自分が持つ渋谷のロックバー『GABIGABI』から配信(放送)するインディーズロッカーたちの支援番組のようなもので、狭い店内をスタジオに見立てて若いロッカーやインディーズロックシーンを紹介している手作り感満載の30分番組。 言ってみれば、20世紀中の超深夜番組にタイムスリップしたような作りだが、それはそれで私的には演出家という立場を離れて楽しめる。 細々とではあるが、実に7年間もの長きに渡って継続されている長寿番組だ。
私がたまに参加するのは、その中の『名盤コーナー』。
私が好きだった名盤を一枚持ち込み、アーティストとその中の一曲を紹介する。 まさに音楽を文脈で語る語り部の役だ。
今や音楽は配信サービスやアプリでオートマティックに拾い聴く時代。
もちろん個人の志向に合わせて幅の広い視野で音源を拾い上げることが簡単にできる。 文脈で音楽を聴く我々はそういう意味では視野は狭い。 ただし、それぞれの志向がはっきりしているので、語り合うことで人と人との繋がりが生まれ、そこから様々な音楽のコアを拾い上げることができる。
どちらがいいのだろう?...
どちらが楽しいのだろう?...
それは誰にも分からないし、個々の音楽ファンのあり方の問題だ。
文章を紡ぐ方なら、文脈で音楽を聴く楽しさを分かって頂けるのだろうか?
こんな番組です…
これは昨年収録し、今年にOAされたもの。
30分中、最後の5~6分が私が出演した『名盤コーナー』です。
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