『双葉荘』を掲載し終えて…
『双葉荘』は、実在したテラスハウスで、タイトルの絵の通りの外観でした。
私が30歳前後の頃、横浜の白楽の高台の住宅地で実際に住んでいた賃貸住宅です。
周囲には白楽公園があり、高台を駅に向かって下ると六角橋商店街… まさに物語通りの環境でした。
当時私は駆け出しのTVディレクター兼プランナーでしたが、TV業界がどうも肌に合わず、大手広告代理店と契約してCMディレクターの道も模索し始めていました。
やがて一緒に暮らしていた最初の妻との様々な行き違いが増え始め、公私共にこれからどうしたものか…と、思い悩み初めていた頃に、あの開襟シャツに丸メガネの亡霊(?)に頻繁に出会い始めたのです。
うっすらとした存在で、出会うのは決まって一階と二階を結ぶ階段とその周辺…
もちろん最初は驚きました。
しかし怖くはないのです。何故なら相手も私を見て同じように驚いているからです。
妄想や幻覚や亡霊とは異質のものと感じていました。
しかも彼を見ていたのは私だけではなく、妻も同じ人物を見ていたのです。
そこまでが実際の私の体験です。
物語中のその後の展開は全て私の創作です。
60歳を過ぎた頃、これを物語に紡いでみようと思い立って生まれたのがこの小説『双葉荘』でした。
その後、脚本化、ドラマ化となり、スタジオセットを組むに当たり、もう一度あの双葉荘を見たくなり、白楽の高台に赴きましたが、そこには既に新しい住宅が立ち並び、環境は大きく変わり、双葉荘もあの坂道も坂道から望んだ横浜港の水平線も、まるで亡霊のようにどこかに消えて無くなってしまっていました。
まずは初のnote投稿ということもあって、一気に全文を一投稿として掲載しましたが、やはりいくら目次処理をしても、これを読まれる方は大変だったと反省しております。 この物語をこれから読む方たちのために、横書きレイアウトの上、各章ごと9つの投稿に分割致しましたので、ご了承ください。
ご意見などありましたら、お知らせください。
さて、次回の掲載ですが…
『双葉荘』と同じ頃に書き下ろした中編の小説『室井の山小屋』です。
『双葉荘』は元々この『室井の山小屋』とのカップリング作として書いたもの。
つまりこの二作で一冊という考え方です。
一章ずつ投稿しております。