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ここ最近の『美味しかった…』

抗癌治療はずっと続けているが、この2年間、現状癌の進行はピタリと止まり、体調も安定している。
一緒に治療を受けている治療仲間の方達と比べても幸い抗癌剤の副作用も圧倒的に少なく、食欲も維持出来ている。
末端神経への影響なのか、明らかに味覚は変わってしまったが、それでも美味しいものは美味しい。

抗癌剤を始めた頃は『美味しい』と思えるものがどんどん減っていった。
今考えるとこれは味覚の変化に感情がついていけていなかったせいで、その味覚に慣れてくると次第に新たな自分の味覚を認識できるようになってくる。
『この食べ物はこんな風に美味しい』という期待が裏切られても、全く味がしないわけではない。
感じ方が今までとは違うというだけのことなのだ。
そこには新たな『味覚』がある。
なので、そこにはまた新たな『美味しさ』『不味さ』があるのだ。

今まで好きだったものがそうでもなくなる…
逆に今まで苦手だったものが美味しく感じられるようになる…
新たな『美味しい』の始まりなのである。

そんな中でのここ最近の『美味しい』を紹介しよう。


これは今の仮住まい、尾山台駅すぐ側の中華料理店、『崋山』の五目そば…

野菜や魚介、肉類の素材の味とスープの塩味のバランスが絶妙なのである。
メニューを眺め色々思案するが、やはりこれを選んでしまう。

こちらは家内が作ってくれた卵がゆ…

高菜のふりかけと梅干し、さらに私は高菜漬けに入っていた鷹の爪を添えた。
元々お粥は大好きだが、辛味の刺激は今まで以上に美味しさを引き立てる。
ご覧の通り、たっぷり頂いた。


恵比寿『俺のイタリアン』のベーコンとキノコのペンネ…


買い物ついで、昼時だったのでふらっと入ったのだが、ベーコンの塩味とチーズのバランスがやけに美味しかった。
こういう期待以上の『美味しい』と出会うととても嬉しい。

目黒『ゆふ徳』のカレー南蛮せいろ…

家内お気に入りの手打ちそば屋。
蕎麦は以前も今も大好きだ。
ただし、だし汁の味覚がちょっと変わってしまった。
でも、このカレー南蛮のつけだれはとても気に入った。
手打ちそばの歯応え、蕎麦の風味もいい。


残りもののお豆腐の味噌汁で作ったおじや…

元々お粥やおじやは大好きだが、こういうものはあり合わせでチャチャっと作るのが基本。
ぶっかけ飯よりは少し手が入った程度のもの。
まあ、そこそこ美味しいというゾーンは比較的広いのだが、これといったレシピがあるわけではない。
それほど失敗はないが、稀にピタッと『これは美味いっ』というストライクゾーンにハマることがある。
まさにそんな出来だった。


ぼっかけうどん…

美味しそうな牛すじ肉が手頃な値段であったので、久々にぼっかけを作った。
ぼっかけは牛すじ肉と蒟蒻をクツクツ煮込んだもの。
私のレシピがある。
たまたま家内が仲良しのママ友からお土産でもらった群馬の幅広うどん麺があったので、ぼっかけうどんにしたら、これがビックリするほど美味しかった!
ちなみに、ぼっかけは薄味に仕上げたおじやにもよく合う。

これはぼっかけのおじや。


マックのダブチ…

たまに物凄く食べたくなる時がある。
仮住まいの近くのマックはちょっと歩く…
なので、この1年間では2回ほど。
店内で食べれば、揚げたてのフライドポテトが激ウマである。
マックはバンスもパテも独特の美味しさ。
マックのハンバーガーはハンバーガーではなく『マックのハンバーガー』なのだ。

焼き魚、お味噌汁、ご飯…

シンプル イズ ベスト…たまにであるが、夕ご飯をあっさりと済ませたくなる。
そんな時は、こんな選択肢があることをつくづく幸運だと思う。
仮住まいの近所には昔ながらの市場があり、新鮮な魚が手軽に手に入る。
大根おろしとすだちを添えれば、完璧な夕餉だ。


我が家のラーメン…

仮住まいに暮らして約10ヶ月、私はよくラーメンを作る。
麺はすぐ近くのスーパーで縮れ系のものを買い、なるべく切らさない様にしている。
具材は、豚肉や焼豚、ウィンナ、卵、キノコ類、厚揚げもあり、青梗菜や小松菜やにんじん等々…冷蔵庫にある有りもので間に合わせる。
中華調味料、酒、オイスターソース、胡麻油…スープレシピはもう頭に入っている。
スープに風味を移すもの、添えるものはその都度異なる。
もちろん麺は最後に硬めに別茹。
昼食になったり夕食になったりする。

うちのラーメンは冷蔵庫の中の残り物で姿が変わる。


すぐ近く、『大阪王将』チャーハン+小餃子…

たま〜に1人になると、ぽっち外食する。
滅多に入らないが、近所の『大阪王将』のチャーハンが食べたくなった。
小餃子と一緒に頼んだら、やっぱり美味しかった!
もちろん、味覚が変わったので以前とは違う味わいだが、問題なく美味しく頂けた。


鯛めし+鯛のカマの煮付け…

家内が近所の市場で美味しそうな鯛を仕入れてきて作ってくれた。
抗癌治療以来『甘味』や素材の『旨味』には敏感になった。
『塩味』は概ね鈍い。
うっかりするとボヤけた味わいになってしまいがちだが、そういう意味では絶妙の美味しさだった。
特に魚のカマの風味は絶品だった。
素材も良かったのだろう。


マロン風味お芋のケーキ…

家内が行っているお料理教室で習ってきたもの。
これ、滅茶苦茶美味しかった。
クリームも生地も『甘味』も今の私には完璧だった。
沢山食べすぎてしまったが…


『太平楽』の『ふのりラーメン』…

仮住まいの尾山台には沢山中華料理屋がある。
比較的近い小さなお店『太平楽』。
『ふのりラーメン』の看板がずっと気になっていた。
家内と食べに行ってみた。
ふのりとあっさり醤油味ラーメン…合う!
私には塩味は薄かったが、その分『ふのり』の風味が補ってくれた。


上野『バニュルス』のパエリア…

上野は展示会がよくあるので、そんな時には家内と外食となる。
上野駅下にあるスペイン料理店『バニュルス』は兄がよく使うらしいので昼食に行ってみた。
ランチメニューの魚介パエリア…これで2人前。
見た通り素材の『旨味』をたっぷり味わえる美味しさ。
量もたっぷりあってお腹一杯!


祐天寺駅・『伊蔵八』のラーメン半チャーハンセット…

チェーン店『伊蔵八』は初めて入った。
ティピカルな醤油ラーメンと同じくティピカルなチャーハンのセット。
スープが美味しい!
醤油味に豚骨、魚介の風味がある。
塩味も今の私には丁度良い。
物凄く特別ではないが後を引く美味しさだった。


デニーズのガーリックチキン…

久々に食べたデニーズの日替わりランチ。
いつの間にかワンプレートになっていた。
値段もそこそこに変わっていた。
お腹が空いていたのでライスは大盛り。
変わらず安定の美味しさだったが、これでワンプレートは食べ難い。
でも、駐車場もあるし、スープも付いているし…
これで文句を言ったらバチが当たる。


倉敷『つるぎ』の茶そば…

熊本行きの途中で泊まった倉敷。
『つるぎ』は肉料理系の居酒屋だが、ここの〆の茶そばが最高だった。
散々肉料理を食べて、飲んで…その後…
量も冷たさも顎たえも風味も、もちろんつけ汁も…
う〜ん…良く出来ていたなあ…という感想。


南阿蘇の豚野菜鍋…

年に数回滞在する南阿蘇の山小屋では地元の野菜が美味しい。
今年は全般的に不作のようだったが、それでもやっぱり地元野菜が美味しい。
家内が用意してくれた夕飯の豚野菜鍋…
間違いなく何とも美味しい。
炊き立てご飯がすすむ…もちろんお代わり…
スープが残ったら、翌日やはり地元の丸餅を放り込んでもさらに美味しい。


五木食品のうどん…

熊本に行くとどこにでも売っているスープ付きうどん。
九州のうどんは柔らかくてコシがある、というのが基本。
スープは関西系であっさり。
山小屋では地元野菜を入れて…落としたまご…
文句ない。


ネギのポタージュ…

家内が作ってくれたネギのポタージュは思いがけず美味しかった!
旅の途中、京都でゲットした九条ネギの粉末ポタージュに手を加えアレンジしたものらしい、
阿蘇は肉の産地でもある。
美味しい加工肉と合わせて美味しいご馳走になった。


人吉『松田』の鰻と蕎麦…

熊本・人吉は鰻の名産地。
阿蘇からはちょっと遠いが、友人に誘われ鰻を食べに行った。
東京の鰻とは全然違う。
歯応えがあって、甘めだがしっかりタレの味が付いていて、多分天然の鰻調理に近いのだろう。
今の私には美味しい。
蕎麦もなかなかだった。


『ヒライ』の牛カルビ丼と蕎麦のセット…

九州に行くと『ヒライ』はどこにでもある弁当とお惣菜のチェーン店。
安くてボリュームがあって、とても人気がある。
阿蘇の山小屋から買い物に出かける国道沿いにも一軒あって、よく利用する。
店内で食べるメニューもある。
今回は初めて食べた牛カルビ丼とあっさり蕎麦のセット…空腹も手伝ってとても美味しかった。


尾山台『Rump』の焼肉…

仮住まいのすぐ近くに新しい焼肉店が開店し、30%オフのチラシが入っていたので、息子も誘い家族で食べに行った。
結構高級な店構えだったので、ある程度の散財は覚悟したが、それほどではなかった。
炭火焼きの洒落た店…久々の高級肉…問題なく美味しかった。
味付けも何も、素材の味だけで充分だった。


ツナのペペロンチーノと生ハム…

フランスからやってくる友人が続いた。
チリとツナの缶詰、辛いガーリックオイル、生ハム…
それぞれ違う友人から貰ったもの。
ツナのペペロンチーノパスタに生ハムを添えた。
間違いないと思ったが、予想以上に美味しかった。
偶然は時として傑作を生み出す…まさに、そんな一食だった。


クリスマスプレート…

今年のクリスマスは仮住まい中。
いつものように客も呼ばないし、毎年恒例のラザニアもローストターキーの準備もしない。
近所の市場で買ってきた調理済みのチキンレッグにマカロニサラダ、近所のパン屋のバケットにピックルス。
家内と2人簡単クリスマスプレートで過ごした。
良く考えたら鶏の足にかぶりついたのは久々だ。
労少なく当たり前の味わいなのに、やけにバランスの良いクリスマスプレートとなり、充分に満足できた。
良いクリスマスはやっぱり味覚で迎えたい。


塩豚のレンズ豆煮…

家内の得意料理である。
美味しそうな豚肉のブロックを見つけたので、腕を振るって貰った。
私は豆類が大好き…レンズ豆が沢山入ったスープには大振りのジャガイモやにんじんがゴロゴロ。
大きな塩豚肉はよく煮込まれてホロホロだ。
『塩味』の感覚の鈍い私は、ウユニ湖の塩を少しグラインドして頬張った。
肉、野菜、豆の風味が口一杯に広がった。


お雑煮…

子供の頃からお正月が大好きな第一の理由はお餅が沢山食べられるからだ。
お餅が大好きなのだ。
お腹一杯でも食べられる。
中年になってからは餅は正月以外は禁止にした。
食べすぎて太ってしまうからだ。
ただし、癌を抱えてからは、何をどんなに食べても全く太らなくなった。
なので、今年の正月は食べたいだけお餅が食べられた。
幸せだった…


毛蟹…

元旦に親戚の新年会に呼ばれた。
そこでおせちやお寿司と一緒に振る舞われた毛蟹。
良く考えたら物凄く久し振りだった。
子供の頃は父親がカニ好きで冬場は良く食べた。
今ほど高価ではなかったからだと思う。
茹でた身を酢醤油で食べたり、お鍋や味噌汁にしていたこともあった。
今や毛蟹は物凄い高級品。
久々に食べたら、やはり身の味がしっかり濃くて、大変美味しかった。


チリビーンズ+パスタ…

大好きな豆の中で一番好きなのはチリビーンズ。
もちろん缶詰で充分だ。
豆の味も食感も大好きなのだ。
正直言って、メキシコ人になりたい。
家内はチリガーリックオイルを振りかけたパスタとジャガイモを添えてくれた。
私にとってこれほどのご馳走はない。


そして、七草粥…

お粥は大好物。お餅も大好物。
子供の頃から1月7日の七草粥の日を楽しみにしていた。
七草がたっぷり入った少し塩味のある白粥を焼きたてのお餅の上にドバッと注いで、熱々で頂く。
絶対に美味しい!
私にとっては正月明けの大切な外せないセレモニーなのだ。


抗がん治療を始める前は長い期間全く食欲がなかった。
治療が始まり、癌の進行が衰え始めると『エドルミズ』という膵臓癌に特化した食欲増進剤を家内が探し出してくれた。
医師とも相談し、それを1日1回飲み始めると,どんどん食欲が戻ってきた。
1日3回の食事は精神的にも重要なアクションである。
健康云々以上に、人生の大きな楽しみであろう。
食べること、美味しいこと、食事を楽しむことは、それを失ってみて初めて知る人生の大きな重要な要素なのだ。
食欲が戻ってからのこの2年間、毎日の食事を噛み締めている。
贅沢は必要ないが、『美味しい』をきちんと心に刻むことで、人生の充実度は変わるのである。

去年の終盤から年明けまでの私の『美味しかった…』でした。






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