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サンタクロースは本当にいる...


サンタクロースは本当にいるのかって?…


サンタクロースはね...
本当にいるんだ。


ずっとずっとむかし…
人が、いまより、ずっとのどかにくらしていたころのこと…

今のようにテレビもゲームもないし、大きな町もない。
お店も学校もかいしゃもない。

人は、はたけをたがやしたり、かりやりょうをしながら、へいわに、なかよくくらしていたんだ。

大人も子どもも、いっしょにいっしょうけんめいはたらいて、食べものをたくわえ、ようやくさむい冬をあたたかい家でいっしょにすごすことができた。

そんなころ、サンタクロースは本当にみんなのすぐ近くにすんでいて、みんなののどかなくらしを見まもっていたんだ。


サンタクロースは一年かけて手作りのプレゼントを用いして、クリスマスにせかい中の人たちにくばってあげていたのさ。
一年、みんながいっしょうけんめいよくはたらいたごほうびにね。

くらしはとてもまずしかったので、みんなはサンタクロースがクリスマスにくれるささやかなプレゼントに大よろこびだったし、そんなサンタクロースのことがみんな大すききだった。

あのころ、人とサンタクロースはいつもいっしょにいたんだ。


年月としつきがたつと、人間は少しずつふえはじめた。

用いするプレゼントもどんどんふえていったので、サンタクロースは『こびと』たちや『けんじゃ』たちに手つだいをたのんで、毎年なんとかプレゼントをくばりつづけていった。

でも、人間たちは数がふえただけじゃなかったんだ。
村が大きくなって、町ができて、大きなとかいもあちこちにできはじめた。
くらしもどんどんゆたかになっていって、みんなはだんだんぜいたくに、よくばりになっていった。

そうなると、人はもう前のようなささやかな手作りのプレゼントじゃまんぞくできない。
みんなサンタクロースのところにおしかけて、あまくておいしいおかしや大きなぬいぐるみ、おしゃべり人形、けむりをはくさい新しきの汽かん車…などなど…つぎのクリスマスにほしいものをねだりはじめたんだ。

やさしいサンタクロースは、できるかぎりみんなのねがいをかなえてあげようとした。
でも、それはとても大へんなことで、手つだいのこびとたちやけんじゃたちをいくらふやしても、みんなくたくたになってしまうんだ。


ある時、見かねたけんじゃの一人がサンタクロースにこう言った。
「人間たちはわがままになりすぎました。このまま人間たちのそばにすんでいると、あなたのためにも、人間たちのためにもよくありません。人里ひとざとはなれた山の上にすまわれてはいかがでしょうか?」

サンタクロースは、そうすることにした…


みんなはサンタクロースのすがたが見えなくなってしまったので、どうやってクリスマスプレゼントをたのんだらいいのか分からず、しばらくの間サンタクロースはのんびりとくらすことができた。

でも、ふえつづける人間たちは、やがて山の上にもすむようになった。
山の上で人がそこに見つけたのは、ひっそりとかくれすむサンタクロースのすがただったんだ。

うわさを聞きつけて、たくさんの人が山にやってくるようになった。
手紙もたくさんとどいた。

みんなは、前にもましてサンタクロースにいろいろなプレゼントをせがむようになってしまったのさ。


しばらくすると、もう一人のけんじゃがこう言った。
「やはりふつうの山の上ではだめですねえ。いっそのこと、ヒマラヤのてっぺん、エベレストに行ってはいかがでしょうか?あそこならきっとだれも来ないでしょう」

サンタクロースは、そうすることにした…


ところがある日、イギリスのと山家がエベレストのちょう上にのぼってきて、サンタクロースはまた見つかってしまったんだ。
それいらい、せかい中のと山家たちがエベレストを目ざして、サンタクロースに会いにやってくるようになってしまった。


こんどはべつのけんじゃが言った。
「この地きゅうではどこに行っても、人間はきっとあなたを見つけだしてしまうでしょう。こうなったら、いっそ地きゅうをはなれて月の上にでもすんではいかがでしょう?」

サンタクロースは、そうすることにした…
月なら、地きゅうからは近いし、人間のくらしもよく見えるからだ。


ところがある日、アポロというアメリカのうちゅう船が月にやってきて、サンタクロースはあっけなくうちゅうひこうしたちに見つかってしまった。

さあ、大へん!

サンタクロースがどんなところにかくれていても、人間はいつかきっとやってきて、かならず見つけだしてしまうんだ。


サンタクロースはけんじゃたちをあつめて、そうだんすることにした。

「いったい、どうしらいいのだろう…」

けんじゃたちもこんどはさすがによいちえが出せず、みんな頭をかかえてしまった。
ちんもくの時間がながれた…


「あ、そうかっ、わかったっ!」
ちんもくをやぶったのは、わかいけんじゃだった。

「どうした?何かよいちえでもうかんだのか?どこかよいところがあるのか?」
サンタクロースは、すがるような気もちでわかいけんじゃのこたえをまった。

「はい、あります。ありますとも!そこなら、わがままでよくばりな人間には、ぜったいに見つけられません。しかも、ここにかくれていれば、せかい中の人に毎年クリスマスプレゼントをわたすことができるのです」

「そんなすばらしいところが本当にあるのか?」

「そ、それは、一体、どこなのだ?…」
ほかのけんじゃたちも、いきを止めて答をまった。

「それは…」

それは?…」けんじゃたちが口をそろえて聞きかえす。


人間一人一人の、心の中です」

「人間一人一人の?……なるほど…」
なるほど…」

サンタクロースは、そのすばらしいアイデアにただただかん心した。

そして、さっそくそうすることにしたんだ。


その時から、サンタクロースは人間ひとりひとりの心の中にかくれすむようになった。

クリスマスに、大すきな人にプレゼントをおくりたくなってしまうのは、そのためなんだ。


おわり…







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