エッセー「実録 あるラリー屋さんの恐怖体験」
その昔、とある関東近県の某ラリーストから聞いた恐怖体験談。
その晩もいつもの林道での練習だった。
どん詰まりまで約2キロの林道を5本くらい走り、上りゴールのどん詰まりやや広くなった所にクルマを止め、一休みしていた時のこと。
「おい、なんかさっきから誰かに見られているような気がするんだな??」
「えっ? 気のせい、気のせい。もう一本行ってあがろうぜ。」
結局、もう一本走ってその日は解散、町まで降りてきて風呂入って寝たそうな。
明けて翌日。
午後になって、仕事中に昨晩一緒に練習したチーム員からの電話が入る。
「おいおい、なんだよ、こんな時間に。」
「たっ、大変だ、テレビ見てるか?」
「??」
「テレビ観てる? ワイドショー、今朝早く例の林道で変死体と首吊り死体が見つかったんだってさ。無理心中らしいだけど、その首吊り死体がぶら下がってた場所がどん詰まりの折り返しの木の上だって!!」
「・・・・・・・」
山深い漆黒の闇の中、自分たちがさんざUターンを繰り返していたどん詰まり付近の巨木の枝に、なんと首吊り自殺の死体がぶら下がっていたのである。
つまり、死体が見つめる中で練習をしていたのである。
まさに知らぬが仏。
ここで一句、「気をつけよう、夜の林道木の上を。」
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