ドライビングテクニックベーシックPart.2 「ステアリングワーク 」

 ステアリングワークは、各操作系のなかでも、最も重要なファクターだと言っても過言ではないだろう。なぜなら、すべての挙動変化には、必ずステアリングによる操作が加わってくるからだ。例えばFRの場合、「クルマはアクセルで曲げろ」とよくいわれるが、曲げるためのきっかけはステアリングでつくらなくてはならない。

 ステアリングを実際に操作する場合に必要とされるのが「正確さ」と「素速さ」だ。いくら正確でも速く回せなければ意味はないし、その逆もまたしかり。もちろん、クルマの運転というのは多分に感覚的な面が良否を左右するので、最終的には自分のもっとも回しやすいスタイルで操作すればいい。だが、正確さと速さを追求するには、ある程度のセオリーがある。

 ドラテク談義でよく交わされる会話に「送りハンドルがいい」、「教習所回しがいい」というのがある。

  ' 送りハンドル ' とは、腕をクロスさせることなく操作する方法。例えば左に切り込む場合は、右手を下から押し上げるように回し、右手が頂点まで達したら今度は左手で引き下げるように連続して回すスタイルだ。右手から左手へとステアリングを送るように見えることから' 送りハンドル ' という名で呼ばれている。

 一方、 ' 教習所回し ' とは、文字どおり教習所で最初に習う回し方で、腕をクロスさせるごく一般的なスタイルだ。基本的には教習所回しのほうが素早く回すことが可能だが、例えばちょうど切り込む角度が手を持ちかえるのと同時になってしまうと、片手の状態でステアリングを保持しなければならなくなる。その点では、常に両手がステアリングを握っている送りハンドルのほうが正確さは上と言えるだろう。

 つまり、どちらのスタイルにも一長一短があるわけで、必ずどちらかに決めなければならないわけではない。素早く回したいときは教習所回しでいいし、そのあと微妙なコントロールが必要になったら、正確に回せる送りハンドルで、という具合にTPOに合わせて使い分けることが必要だ。

 ドライビングスタイルに ' 正解 ' はない。自分のもっとも回しやすいスタイルで回せばいいのだ。実際、過去にも全日本ラリー選手権でチャンピオンを獲得したあるドライバー(敢えて名前は伏すww)は、なんと、モータースポーツでは御法度とされている逆手ハンドル、つまりトラックの運ちゃんが回すような、ステアリングの内側から握るような回し方をしていた。

 もちろん回し方も大切だが、何より重要なのは確実な切込みタイミングで、さらに的確な操作量で切り込むこと。回すスタイルよりも、回したことによる結果を重視しなければならないわけだ。

 クルマの運転は「習うより慣れろ」といわれるが、どれだけステアリングを握ったかで上達度合いが違ってくることを忘れないでほしい。


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鳴海邦彦 / KUNIHIKO NARUMI OFFICIAL
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