ワンマングルメNo.12「三浦漁協直営レストラン " 地魚料理 松輪 " で幻の黄金サバを食す! 」
横浜横須賀道路を佐原インターで降り、134号線を三崎方面へ10分、 「三浦海岸」交差点より金田、剱崎方面へ海岸線を15 分ほど走ると、大分の関サバと並び、ブランド鯖として全国にその名を轟かす幻のサバ " 松輪の黄金サバ " が水揚げされる松輪漁港に着く。
三浦半島の南端、剱崎灯台の袂に位置する松輪地区では、6~11月の漁期に沿岸域に来遊するマサバを一本づつ大切に釣上げるサバ一本釣漁業が盛んである。
東京湾の入り口、潮流の早い浦賀水道付近を回遊する松輪サバは、「これがサバか?」というほど肉付きが良く、脂がのって美味なため、築地市場だけでなく、さばを生で食す食文化が定着している関西市場でも高い評価を受けている。
8月のお盆過ぎに旬を迎える松輪サバは、胴体から尾にかけて黄色い筋が入り、「松輪の黄金サバ」と称され、サバの最高級品として珍重されている。
松輪サバは春に産卵し、その後沿岸域(東京湾)に来遊し栄養補給のために積極的に食餌する。その餌は 魚類を多く補給する沖合域の鯖とは違い、海老類(シラエビなど)、甲殻類を多く食べている。そのため、濃厚で旨みが強い肉質となる。
松輪サバは、その肉付きの良い見事な魚体、脂ののった格別な旨さから、江戸時代より郷土の逸品として知られきた。現在の釣り方も当時と変わらず、魚を一本づつ大切に釣上げる一本釣り漁によって漁獲され、松輪地区の漁師が老舗のブランドを頑なに守り続けている。近年は全国的にマサバ資源が減少し、その中でも黄金のサバと称される、最高級な松輪サバは益々貴重な存在になっている。
そんな松輪サバに取り憑かれ早10年。毎年旬の時期になると、松輪漁港にある三浦漁港松輪支部の直営レストラン「地魚レストラン 松輪」に赴き、貴重な幻のサバを心ゆくまで堪能してきた。
「地魚レストラン 松輪」は、一階が釣具やお土産品を売っている漁協直営の江奈ビレッジの二階にあるが、改装された店内は広々としており、ガラス越しに見える東京湾の景色も綺麗でなかなかのムードである。
東京湾が見渡せる特等席に陣取り、松輪サバの旨みを十二分に味わえる「松輪とろサバ炙りたてセット(小鉢、刺身、ご飯、汁、デザート付き)を注文。
待つこと暫し、やがて目の前に待望の料理が運ばれてきた。
大胆にも貴重な黄金サバの半身を使い、その表面の部分を軽く炙ったとろサバの上には、スライスされた玉ねぎが盛り上げられている。
メインのとろサバの他、付け合せの刺身として、三崎本マグロの中トロと冷水でさらしてパリッと仕上げたスズキの洗い、それに軽く湯通しした白子が添えられている。
とろサバは薬味とともにポン酢で、中トロ、スズキ、白子はわさび醤油でいただく。
松輪サバの肉厚で脂がのった鮮やかなピンク色の切り身を暫し愛でた後、ポン酢をつけておもむろに口中へと投じる。
咀嚼すれば、浦賀水道の激しい潮流で鍛えられたマッシブな肉の弾力性と、甲殻類をエサとして蓄積された濃厚な旨みとが食感と味のシンフォニーを奏でる。
これを味わうために一年間生きてきた、ああ、もう何も望むものはない、いつ死んでもいい! そう思わせるほどデモーニッシュな味、それが松輪の黄金サバである。