カーコラム 「初代ホンダ レジェンドに搭載されたウィングターボエンジンの想い出」
A/Rと表記して「エーバイアール」と読む。
A/Rとは排気ガスの吸入面積を吸入面の中心からタービンの中心までの距離で割った数値で、ターボチャージャーの性格を決定づける重要な要素である。一般的にこの数値が小さければ低速型、大きければ高速型のターボチャージャーとなる。
かつてホンダの初代レジェンド(1988年10月14日にマイナーチェンジされたKA5型レジェンド)に搭載されたC20A型エンジン(1996cc V型6気筒 OHC)に装着されたターボチャージャーには、このA/Rを可変的に変化させ、全域でのトルクアップを図ることを目的としたユニークなシステムが採用されていた。
ウイングターボと名付けられたこのシステムは、タービンブレードの周りを4枚の固定ウィングと可変ウィングで取り囲み、エンジンの運転状況により可変ウイングを作動させること固定ウイングとのノズル面積を調整してA/Rを変化させるものだった。
このシステムによりエンジンの運転状況に応じた最適なA/Rが得られるので、ターボチャージャーのポテンシャルをフルに引き出すことが可能となった。
また、高まりすぎた過給圧を調整するためのウエイストゲートが不要となるため、エネルギー損失の面でも有利なシステムだった。
初代レジェンドには、このウィングターボシステムの他にも、専用のラジエーターを持った水冷ターボチャージャーを採用したり、熱対策に対応するための小型ファンをボンネット裏に装着するなど、ホンダならではの独創的且つ斬新なメカニズムが随所に散見された。
余談だが、過去にこのクルマを試乗する機会があったが、ターボラグを全く感じさせない滑らでリニアな出力特性と全域での回転領域での図太いトルクは、ひとクラス上の大排気量者を思わせるものだったように記憶している。
ターボチャージャーの多様性を感じさせてくれた画期的なテクノロジーであった。