カーコラム「今だからこそPFD60型ISUZUジェミニ・ディーゼルの復活を熱望する!」
いすゞPFD60型ジェミニ・ディーゼルの良さは、乗った者でなければわからない。
専用開発されたQ-D1800型ディーゼルエンジンを搭載したPFD60型は、1979年11月にガソリン車のホットモデルであるZZの登場と時を同じくしてジェミニシリーズのラインナップに加わった。
1981年当時、ZZ Rのオーナーだったこともあり、定期点検の際の代車として何度かPFD60型ジェミニ・ディーゼルのステアリングを握ったことがあるが、Q-D1800型ディーゼルエンジンの低振動性、静粛性、ガソリンエンジンにも勝るとも劣らない動力性能、そして何よりもその燃費の良さに驚嘆した。
Q-D1800型は直列4気筒のディーゼルエンジンで、ボア×ストローク=84mm×82mm、排気量1817cc、最高出力61PS/5000rpm、最大トルク11.2kg/2000rpmである。
ピークパワー的に見れば大したことはないが、最大トルクの11.2kgを僅か2000rpmで発生させているのがいかにもディーゼルエンジンならでの出力特性と言えよう。
1982年10月には、ディーゼル車に初の電子制御燃料噴射装置を採用し66Pまでパワーアップさせたモデル「LT-E」と「LJ-E」(通称 ' エレクトロディーゼル ' )が登場し、動力性能と燃費性能のさらなる向上が図られた。
現在、日本の自動車メーカーはハイブリッドだEVだと新しい物ばかり追いかけているが、いすゞは今を遡ること30年以上も前に「小型軽量・高効率なディーゼルエンジン+軽量コンパクトなボディ」というソリューションをもって20km/ℓを上回る実燃費をコンスタントに叩きだす一般市販車を製造・販売していたのである。
「たら」、「れば」の話はこの世にはないが、いすゞが乗用車の生産を打ち切らなければ、高性能と優れた環境性能を併せもった凄いクルマが誕生していたに違いない。