エッセー「"燃えよドラゴン"に見る道(タオ)イズムの真髄」
"道(タオ)は道(タオ)と認識した段階で道(タオ)ではなくなる"、これは即ち道(タオ)とはいわゆる混沌(カオス)であり、実体があるようで実は無であり、いかような解釈も可能、無であって有、逆もまたしかり有であって無という極めて捉え処がないものであるということを端的に表わしている。
道(タオ)を理解しようと思考を巡らすことは極めて無意味である。思考を巡らせれば巡らせるほど迷路(ラビリンス)を彷徨い、最終的にはその遠大且つ深淵な世界に圧倒され茫然自失な状態となる。
道(タオ)は思考などでは到底理解不能な宇宙の根本原理であるが、道(タオ)を理解する方法がただ一つだけ存在する。それは"感じる"こと。無駄な思考を捨て、己の直感に任せ感じること。目の前の事象や思考に囚われていては簡潔にして美しい宇宙の根本原理を理解することは不可能なのである。
ブルース・リーは"燃えよドラゴン"OPシークエンスの一部である"Lao's Time"で彼が創設したジークンドーの根本思想である道(タオ)イズムの真髄を簡潔且つ平易に表現している。
リーは弟子のラオに対し「私を蹴って見ろ」と命ずる。ラオは戸惑いながらリーに対してサイドキックを繰り出す。しかしリーは「それはなんだ?まねごとか?必要なのは感情の内容だ」と一蹴する。そして「もう一度」と命じる。再び再度キックを繰り出すラオ。しかしリーは「感情の内容だと言ったはずだ、怒りではない、もう一度」と命じる。そして再び再度キックを放つラオ、二発目のキックを手で払ったリーは満足げに「そう、それだ、何を感じた?」するとラオは「考えるに。。」。そこでリーは間髪を入れずにこう諭す「考えるんじゃない、感じるんだ、この指は月への道を指し示している、しかし指に集中するとその先にある宇宙の荘厳さを見逃すことになる」
このわずか2分あまりのシーンにこそ"道(タオ)イズム"の真髄が凝縮されている。
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