ショートエッセー 「キルゴア中佐」

サーフィンに最適な三角波が立つ海域が敵の陣地という理由だけでベトコンの村を襲撃するという狂気。

ヘリで敵陣を攻撃する際、大音響でワーグナーの"ワルキューレの騎行 "を流す狂気。

制圧途中で、まだ敵の迫撃砲が着弾するなかガチでサーフィンをする狂気。

対岸にあるジャングルにベトコンが潜んでいるので安全にサーフィンができないという理由でナパーム爆弾でジャングルを焼き払うという狂気。

激しい戦闘中、弾なんかあたりゃせんぞ〜と喝を入れる狂気。

それでいて、負傷したベトコンの赤ん坊とその母親をヘリで病院まで送れと命令する矛盾。

戦争の狂気と矛盾のすべてが凝縮した男、それがキルゴア中佐である。キルゴア中佐こそTHE WAR、戦争そものである。

朝に漂うナパームのガソリン臭は勝利の香り。

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鳴海邦彦 / KUNIHIKO NARUMI OFFICIAL
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