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カーコラム「1990年MAZDAプレス試乗会 in 谷田部 3ローターセンセーション "ユーノス・コスモ"の衝撃」

 第35回東京モーターショーが閉幕後の1990年11月某日。当時茨城県つくば市にあった財団法人日本自動車研究所(JARI)の高速周回路・通称「谷田部」においてマツダのプレス向け試乗会が行われた。

 試乗車は、ユーノス300、500、800、ユーノスブランドのフラッグシップモデルであるユーノス・コスモ、そしてオートザム系列で販売されるミドシップ軽自動車AZ1の計5台だった。

 試乗会の目玉は、なんといってもユーノス・コスモ。

 ユーノス・コスモは、スコモ史上4代目となるモデルで、搭載されるパワーユニットは3ローター式ロータリーエンジンに日本初のシーケンシャルツインターボを装着し、最高出力280PS、最大トルク41.0kg-mのパワースペックを誇る20B型エンジンである。

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 20B型エンジンに装着されたシーケンシャルツインターボは、装着された大小二つのターボチャージャーをエンジン負荷に応じて順次駆動させるもので、低回転域を受け持つプライマリータービンから中・高回転を受け持つセカンダリータービンへの切り替えは専用のコンピュータにより制御される。

 どちらが前か後ろかわからないような、あまりにも前衛的なデザインから「UFO」、「円盤」と酷評された3代目の反省から、4代目コスモのデザインは直線を基調としながらも、肉感的な曲線も盛り込んだネオグラマラスなものへと変貌を遂げた。ボディフォルムの変更に伴いcd値も軽減され、空力特性の向上が図られた。

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 サスペンションは、フロントにダブルウイッシュボーン式、リヤにマルチリンク式を採用し、高速安定性を重視したセッティングが施された。

 本格的な冬の到来を間近に控えた晩秋の筑波学園都市。矢田部高速周回路の本部前に5台の試乗車が勢揃いした。

 その中でもひと際目立つのがユーノスコスモの流麗なフォルムだった。

 コース前の本部棟でひとしきり開発コンセプトとメカニズのブリーフィングを受けた後、ヘルメットを被り暖気運転中のユーノスコスモに乗り込んだ。

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 シートベルトを締め、4速ATのセレクトレバーをドライブに入れてそろそろとコースへとクルマを進める。

 41.0kg-mの図太いトルクは、クリープ状態でも1.6トンの車重を前方へとグイグイ押し出してゆく。

 バンクへと続く長い直線路に合流し、アクセルをじわりと踏み込む。とたん、急激な加速Gが全身を襲った。

 そのままフラットアウト。タコメーターとスピードメーターがまるで連結したかのように跳ね上がる。

 月並みな表現だが、まさに怒涛の加速。プリマリーターボからセカンダリーターボへの切り替えも全く気付かないほどスムーズ。まるで強力な電動モーターのようなシームレスな加速感が延々と続く。

 「チンコン、チンコン。チンコン。。。」(速度警告チャイムの音)、さらに「ブーッ」という無粋なブザー音。ロータリーエンジンの特有のレブリミッターの作動音である。室内が超静かなだけに、ワーニング音が一際耳障りに感じる。

 1.5kmの直線はあっと言う間に終わり、スピードメーターの目盛を振り切ったまま、ユーノスコスモは矢のように矢田部名物 傾斜角45度のバンクの最上段へと飛び込んで行った。

 表バンクを抜け、再び1.5kmの直線を最高速を走り抜け、そのまま裏バンクへ。まさに矢のような安定性直進安定性。そしてずば抜けた高速旋回力。思わず頬は緩む。

 高速周回路を5周し、ピットに戻る頃にはすっかりユーノスコスモのパワーパフォーマンスに魅せられていた。

 余談だが、谷田部のバンク内は最高速度は時速190kmで設計された。高速周回路には3本のガイドラインが引かれ、通常の逆時計周り(左周り)の場合、一番左のライン(バンク内最下段)が最高速時速130km以下、センターのライン(バンク内中段)が時速150km以下、そして最も右のイエローライン(バンク最上段)が130km以上のスピードレンジとなっていた。



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