ワンマングルメ No.30 「NEO JAPONISM(新和風)スパゲティの旗艦"はしや"で味わう極旨の"うにのスパゲティ」
そもそもスパゲティはイタリアのパスタ料理の一種である。本国イタリアでは主としてトマトソース、オリーブオイル、ままクリームを味付けのベースとしたスパゲティが主流であり、奇をてらったアレンジはほとんど見当たらない。
翻って我が国日本。イタリア同様、日本でも老若男女を問わずスパゲティが大好き。今や米やパンに次いで消費量が多い主食の一つである。
日本のスパゲティの歴史を振り返ると、1953年(昭和37年)創業の老舗専門店「壁の穴」や一部の町洋食店を除けば、スパゲティは主として喫茶店のメニューとして提供されることがほとんどで、提供されるスパゲッテイのバリエーションも、トマトケチャップで味付けした"ナポリタン"とデミグラソースを流用し、それにひき肉を加えて作られたソースを茹で上げたスパゲティにかけた"スパゲティ ミートソース"の2種類しかなかった。
さらに、喫茶店系のスパゲティは使用される乾麺もまるでうどんのように太めで、一時に大量に茹で上げられたものを注文を受けてから再調理するというパターンがそのほとんど。スパゲティが最も美味しく食べられるいわゆる"アルデンテ"など夢のまた夢の時代であった。
しかし、昭和40代後半から50年代に入ると、日本人の食生活の多様化・高級化に伴い、街中、特に東京を中心にスパゲティ専門店なるものがポツポツを出現し始めた。
一昨年の4月に惜しまれながらも閉店した代々木八幡のスパゲティ専門店"はしや本店"もそんな専門店の一つ。
"はしや"の創業店主は元々は老舗「壁の穴」で修行しその後独立した人物。そのため、"はしや"の一皿には"NEO JAPONISM(新和風)"、"アレンジ・スパゲティ"のパイオニアである名店「壁の穴」のDNAが色濃く受け継がれている。
"はしや"が提供するスパゲティはトマト系、バター系、クリーム系といった基本テイストに、豊富なバリエーションのトッピングを組み合わせた日本独自のアレンジ・スパゲティである。
豊富なバリエーションを誇る"はしや"のメニューの中でも、個人的に特にお勧めしたいのが「うにのスパゲティ」である。また、このメニューこそが"はしやイズム"を最も感じる逸品でもある。
現在では「うにのスパゲティ」は一部のイタリア料理店でもオンメニューされるようになったが、飽くまでもベースは生クリームとバターであり、トッピングが生うにである場合が多い。
"はしや"の「うにのスパゲティ」で使用するのは粒ウニ。アルデンテに茹で上げられた熱々のスパゲティにバターと粒ウニをまんべんなく和え、仕上げに刻み海苔をトッピングするというシンプルなもの。
加工食品である粒ウニは、それ自体が完成された食材である。そのためバターでコクを出し、ほんの僅か味を調整してやるだけで一品が完成していまうのだ。
さらに"はしや"のメニューには「うにのスパゲティ」に、たらこ、イカといったトッピングを加えたアレンジバージョンもラインナップされている。そしてこれがまた美味しい。
代々木八幡の"はしや本店"は閉店してしまったが、系列である"はしや幡ヶ谷分店"、新宿野村ビル地下2階の"はしや野村ビル店"は未だ健在。自分のような"はしやアディクト"の欲望を満たしくれている。
そして、"はしや"の長い歴史の中から輩出した"はしや"のDNAを受け継ぐいわゆる"はしや系"の専門店が都内各所に数点在しており、彼らもまたしっかりと"はしや"の味を伝えている
"はしや"のスパゲティは日本人の味覚に最もマッチした和風スパゲティとして、これからもファンを増やし続けていくことだろう。
はしや 新宿野村ビル店
東京都新宿区西新宿1-26-2 新宿野村ビルB2F
050-3467-5948