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カーコラム「NISSAN BNR32 SKYLINE GT-R 備忘録 Part.5」

 BNR32型GT-Rのサスペンションはロールを無理に制御せず、乗り心地とコーナリング性能両立させることを目標にセッティングされている。

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 そのため、バネレートは意外に低く、フロントが2.4kg/mm、リヤが2.7kg/mmとなっている。

 また、フロントのスタビライザーも直径20mmと細い。

 ショックアブソーバーは、当時最先端だった微低速バルブを内蔵したものを採用し、ピストン・スピードが低い極低速域での減衰力特性を大幅に向上させている。

 ショックアブソーバーの減衰力は、フロントの伸び側が175kg、縮み側が51kg、そしてリヤの伸び側が113kg、縮み側41kg(すべて0.3m/sec時)である。

 スプリングとショックアブソーバーとの基本セッティングに加え、ブッシュの一部のピロボール化や、ロアアームに鍛造製を採用するといったサスペンション剛性をアップするためのチューニングも施された。

 サスペンションセッティングの最終的な詰めは開発ドライバーの徹底的な走り込みにより行われ、数値的スペックだけでなく、いかに人間の感性にマッチするかが追求された。

 さらに、この4輪マルチリンク式サスペンションには、日産のお家芸とも言えるSUPER HICASが組み合わされている。

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 BNR32型GT-Rに採用されたSUPER HICASは、操縦安定性と運動性とを高次元で両立させる画期的な4WS(4輪操舵)システムで、それまでのHICAS・HICASⅡをさらに進化させたものだ。

 SUPER HICASの大きな特徴は、制御方法をHICASⅡのディレイ制御(効きを若干遅らせることにより違和感のない制御を行う)から位相反転制御に変更したことだ。

 この制御方法は、ステアリングの切り始めに一瞬後輪を逆位相(後輪を前輪の向きと逆にする)にし(最大1度)、ヨーを発生させてやる事で回頭性を向上させ、次の瞬間には素早く同位相に反転(最大1度)して後輪のコーナリングフォースを高めるというもの。

 逆位相の舵角及び操舵方向切替のタイミングは車速とステアリング操作に応じてコンピューターが判断し、レスポンスに優れたアクチュエーターによる後輪を操舵する。

 このシステムの採用により、BNR32型GT-Rの直進安定性並びにコーナリングトレース性能は大幅に高められることとなった。

 もちろん、このシステムのセッティングもサスペンション同様、最終段階ではテスト・ドライバーによる実走行テストにより熟成された。

 また、実走行の際に際に極めて重要なファクターとなるステアリングフィールに関しても徹底的な検討がなされた。その結果Z32型フェアレディZと同じ新電子制御パワーステアリングが採用された。

 このシステムの採用により、低速での取り回しの良さと、高速域でのステアリングインフォメーションの明確化という相反する課題が一挙に解決されることとなった。


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