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エッセー「私的スポーツカー論」
単なる移動手段としてではなく「運転そのものを楽しむ」ためのクルマ、「走る・止まる・曲がる」といった基本性能をハイレベルで満たしているクルマ。そんなクルマ本来の姿を遵守してつくられたクルマをあえて「スポーツカー」とよびたい。
テクノロジーの進化は、ドライバーから「運転を楽しむ」という要素を奪いつつある。単なる移動手段としてクルマを使うのならそれでもいいだろう。しかし、クルマを操縦し、運転そのものを楽しみたいというドライバーにとっては、なんとも寂しいことである。
どんなにテクノロジーが進歩しても、地球上の乗り物であるクルマは常に地球の物理法則に支配されている。つまり、クルマは重力、摩擦、遠心力、そして空気抵抗といった要素を無視しては走ることができないのであり、さらに極論すれば、タイヤの性能以上の能力を発揮することは不可能なのである。
こうした制約のなか、そのクルマのポテンシャルをフルに引き出してやることが、ドライバーに課せられた本来の使命であり楽しみなのだ。鉄やプラスチックといった無機物で作られたクルマは、人間という有機体とヒュージング(融合)することで完結するいわばサイボーグのような存在である。そして、その究極のカタチがスポーツカーなのである。
スポーツカーは決して特殊なクルマではない。走る、止まる、曲がるといったクルマの基本性能を満たし、なおかつドライバーの意図を汲み取り、それに逆らわず従順且つ愚直に従うクルマをスポーツカーと定義とするならば、敢えてスポーツカーと謳わなくともそのジャンルにカテゴライズされるクルマは数多く存在する。
いまこそスポーツカーに乗ろう。
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