カーコラム「意外に知らないLLC(ロング・ライフ・クーラント)の話」
ロングライフクーラントはエンジン専用の冷却液で、「不凍能力」、「100℃以上まで沸点を高める能力」、エンジンの冷却水が循環している部分の金属にサビを発生させない「防錆能力」の三つの基本能力を備えている。
ロングライフクーラントは、「LLC」という略称が用いられる。性能面の基準としては工業規格のJISが設定されているが、実際には、それぞれの自動車メーカーが独自に開発したLLCを新車時点でラジエターに注入しているのが大半だ。
一般的なJIS基準に準拠したLLCは2年ごとの交換が一般的だが、乗用車に関しては最初の交換時期にかぎり、初回車検時と同時期の3年目という指定になっている。
最近はメンテナンスフリー化と同時に、抜き取ったLLCの処理問題や公害防止などに関連し、できるだけ長い期間使用できるLLCが使われはじめている。例えばホンダ車では、走行20万kmまたは使用年数11年間までは交換不要のLLCを使用するようになっている。5年間程まで交換時期を延ばしたLLCを使用しはじめた他の自動車メーカーもある。
ロングライフ化に関する性能以外に、不凍液としての性能はどのメーカーのLLCもほぼ同じである。水との混合度合いによって凍結温度に違いが生じるLLCは、その混合率が50%の場合、不凍温度は約-50℃。国内の温暖地仕様の新車はLLCと水の混合率が30%程で、この場合の凍結温度は約-15℃付近になる。
LLCを交換するときは、その時点でエンジンとラジエターの中に入っているLLCを全部抜き取る必要がある。LLCは水との混合液として注入されているため、総排気量が2000ccクラスのエンジンでも、5~7リッター程のLLC混合液が入っている。
一般的には、ラジエターの真下にあるドレーンプラグを外し、ラジエターの中に入っているLLC混合液を放出させた後、新しいLLCを注入する方法がとられるが、この方法では、実際にエンジンとラジエターの中に入っているLLC混合液の3分の1程度の量しか抜き取ることができない。つまり、半分以上の古いLLC混合液がエンジンの冷却系統に残った状態になっていることになる。
ここで、できるだけ多くのLLC混合液を抜き取るには、エンジンのシリンダーブロックに設けてあるドレーンプラグを外す必要がある。しかし、シリンダーブロック側のドレーンプラグは、その存在位置を探すのさえ困難な、奥のほうに設定されているのが大半で、一般のオーナーが手持ちの工具でLLC抜取り用ドレーンプラグを緩めるのは困難である。
ディーラーのサービス工場でも、ラジエターの中に入っているLLC混合液だけしか抜き取らずに「LLC交換完了」としているケースが見受けられるので、サービス工場に作業を依頼するときには「全量交換すること」をとくに強調したほうが安心。工場によっては、専用のバキューム式LLC交換装置を備えているところもあるので、そのような工場に交換作業を依頼すれば、LLC全量交換に対する安心度は高い。