エッセー 「映画 "The Rock "に見る兵士の本分 」

兵士の戦いに理由はいらない。

任務が与えられれば、ただそれを遂行するのみ。高揚も興奮も、そして後悔もない。粛々と淡々と、敵を倒し、生き残り、そしてまた戦う。兵士は殺戮者でも破壊者でもない。自らの人生を戦闘という崇高なミッションに捧げた求道者である。

しかし、その純潔は時として腹黒い政治屋に利用され、何も知らない大衆の非難の的となる。彼らの気高い精神を薄汚い政治家が弄ぶ事は決して許されない。

1996年にジェリ・ブラッカイマーとマイケル・ベイにより製作された映画 " THE ROCK " にはそうした思いがこめられている。

アメリカ海兵隊武装偵察部隊の伝説的英雄・ハメル准将(エド・ハリス)は、14人の部下と共に化学兵器VXガスを奪い、サンフランシスコ湾に浮かぶかつての刑務所島・アルカトラズ島(ザ・ロック)に観光客とガイド81人を人質にとり立てこもる。

ハメル准将は、国防総省に対し、かつて非合法作戦に従事し、叙勲や葬儀もないまま闇から闇に葬られた部下の遺族に対する補償金として1億ドルを要求、もし要求が受け入れらない場合には猛毒のVXガスを積んだロケットをサンフランシスコに打ち込むと宣言する。

緊急事態を受け、FBI長官は特別捜査官で化学兵器のスペシャリストのスタンリー・グッドスピード(ニコラス・ケイジ)に、アメリカ海軍特殊部隊SEALsに同行して島に潜入し毒ガスを処理するよう命じる。

しかし、ザ・ロックに潜入するためには、アルカトラズ島から唯一脱獄できた男、現在は刑務所に監禁中の元英国陸軍特殊部隊(SAS)大尉、ジョン・パトリック・メイスン(ショーン・コネリー)の協力が必要だった。

CIAに陥れられた過去を持つメイソンは、当初協力を拒んで逃走をはかるが、グッドスピードはなんとかメイスンの信頼を勝ち取る。2人はSEALsとともにザ・ロックへと向かう。しかし、潜入作戦はすでにハメル准将に見抜かれていた。先行のSEALsは旧監獄のシャワールームで敵の待ち伏せに見舞われ、激しい銃撃戦の末、全隊員が射殺される。

本作の中でもひときわ印象的なこのシーン、男達が美しく凛々しく、そして悲しい。

敵でありながらも尊敬の念を捨てきれないアンダーソン中佐とハメル准将。軍人同士、男同士の心の機微が観る者の心を熱くする。何度観ても泣ける。

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鳴海邦彦 / KUNIHIKO NARUMI OFFICIAL
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