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エッセー「"All That Jazz”的昇天願望」

 人生の最期は華々しく逝きたい。ブロードウェイの天才演出家ボブ・フォッシーが監督した自伝的映画「オール・ザット・ジャズ」のエンディングの如く。

 この映画の主人公ジョー・ギデオンはボブ・フォッシー自身のドッペルゲンガーであり、華々しいエンディングは彼自身の願望である。

 すべての生物は誕生した瞬間から死への旅が始まる。換言すれば死ぬために生まれるのである。

 人間の一生などたかだか100年、宇宙時間で計れば一瞬にもならない。

 だからだこそ踊り、そして歌う。それが自らが生きた証、レゾンデートル(存在意義)。

 カオスから生まれたからこそ「最後の瞬間」にはこだわりたい。

 笑って死ねる人生、最期の最後までカブキ者。人を笑わせてなんぼ。アホと言われて胸を張る。

 最期の時は隅田川に屋形船を仕立て、芸者衆の踊りを愛でながら美人の看護師さんの膝枕で逝きたい。もちろん、最高の酒と最高の肴と共に。

 恵比寿のラ・ターブル・ドゥ・ジョエル・ロブションの料理にジュヴレ・シャンベルタン、食事の締めはへレスのペドロ・ヒメノス、そしてトカイのエッセンシア、ドイツのトロッケン・ベーレン・アウスレーゼ、フランスのソーテルヌを飲み尽くし、ラストはメキシコの極上のテキーラとムサノ・ロッホの一気飲みで炎を吹きながら逝く、それが望む理想の昇天である。



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