カーコラム「メルセデス・ベンツW201型190E2.3-16の思い出 Part.4」
メルセデス・ベンツ190E 2.3-16が納車されてから2ヶ月後の7月、都内の国道246号線を走行中、渋谷南平台の交差点で信号待ちをしていたところ突然エンジンが停止した。エアコンのブロアスイッチを一段強めに調節した直後の出来事だった。
その日の関東地方は記録的な猛暑。エンストした場所は3車線中央の先頭。慌ててハザードを出し再始動を試みるもののセルは回れどエンジンは一向に息を吹き返さない。
イグニッションオンの状態で燃料ポンプの音が聞こえない事から、燃料系のトラブルに見舞われたと判断した。
取り急ぎ3車線中央にエンコしてしまったクルマをセルモーターの力で道路の左側まで移動させ、道路脇の公衆電話からJAFに連絡を入れた。
しかし全く繋がらない。回線が超込みあっている。20回くらいかけた頃やっとオペレーターが出たので状況を伝えると「今日は炎天下のため、都内で物凄い数のトラブルが発生しているので何時に現場へ行けるかわからない」との回答。灼熱地獄の車内でいつ来るかわからない救援を待つのもしんどいので、JAFはキャンセルし購入した中古車店に連絡を入れた。
電話に出た担当者に状況を説明すると、やはり燃料系のトラブルの可能性が高いとのことだった。自走ができないので、ローダー車の手配と相なった。
炎天下の中で待つこと1時間、やっとローダー車が到着しクルマはそのまま提携整備工場へ。取り残された人間様は地下鉄の池尻大橋駅から電車に乗り帰宅。
悪夢のエンスト事件から4日後、修理が完了したとの連絡を受け引き取りのため販売店へと向かった。
エンストの原因は電機系だった。燃料ポンプや燃料噴射装置などへの通電を司る「第一リレー」と呼ばれる部品がお釈迦になったため通電が絶たれエンジンが停止してしまったのだ。
ボッシュ製のリレーは一個4000円也。それに修理代金とローダー代を合わせ計20000円の出費となった。
ドイツ車は、まずこうした安価な部品を最初に壊してメインパーツへ被害が及ばないように設計されているそうだ。合理的と言えば合理的な思想だが小さい部品一個が壊れるたびにエンストされたんではかなわない。しかし、これが外車道である。
修理代を支払い、コスワースエンジンに再び火が入った。しかし安堵したのもほんの束の間、この事件は後のトラブル地獄のプロローグに過ぎなかった。