カーコラム「ISUZU PF60型ジェミニZZ Rの思い出 Part.3」
1981年3月、ディーラーの決算期に合わせ、ついに念願のジェミニZZ Rを新車で購入した。
ボディタイプはセダンでカラーはブラック。
ZZの車種バリエーションはスタイリッシュなクーペとセダンの2種類があり、それぞれの車種に豪華装備(現在からみれば質素)のTと、超スパルタン(余計な装備は何もない)Rとが設定されていた。
丈夫なセンターピラーを持ったセダンに比べ、ボディ開口面積が大きいクーペの方がネジレ剛性的に弱いため、通常の場合には補助部材などの採用によりクーペの方が車両重量が重くなるものだが、なぜかジェミニの場合はクーペの方がセダンに比べ軽量だった。
因みに、同じRで比較すると、クーペが975kg、セダンが995kgとクーペの方が20kgほど軽い。一見するクーペの方が軽量で、運動性能的にも優れていのではないかと思える。
しかし、当時全日本ラリー選手権で、ジェミニZZ Rを駆って連戦連勝を重ねていたトップラリードライバー・金子繁夫氏によれば、セダンの20kg分の重量増加はリヤ部分であり、リヤの接地加重を高めるのに有利に働いているとコメントしている。
その効果は特にラリーの上りセクションなどで顕著に現れるという。つまり、クーペはリヤ部分が軽い分、下りでは有利だが、総合的な観点から見ればセダンの方が優れている。
というわけで、ミーハーな自分的には一流ラリーストに感化され、セダンを選択した。
Rはデフォルトでエアコン無し、カーステは無し、パワーウィンドウ無しという超スパルタンな仕様となっており、ただ走る事のみを追及した走り屋垂涎のマシンである。
オプションとしてエアコンやカーステは用意されているが、もちろんそんな軟派な物はいらない! ということでそのまま。今から思えば、つくづく若さとは素晴らしいものだと思う。
いすゞというメーカーは徹底的な凝性である。かつてのべレットや117クーペもそうだったが、ジェミニZZの場合はさらに過激にエスカレートし、購買層である走り屋の琴線をくすぐる珠玉のオプションが純正でしかも安価に用意されていた。
その内容は、
①機械式LSD②空冷式オイルクーラーの2点セット
これはもう勃起(失礼)ものである。そしてこのオプションの価格は、なんと33,000円也! しかも工賃込み。メーカーオプションだからラインで組んでくる。手作りか! と、思わず突っ込みをいれたくなるようなバーゲンプライス。
因みにミッションは、クロス気味のGTレシオと、全体にローギヤード且つワイドレシオで加速性能を重視したスプリンレシオの2種類をメーカーオプションとして選択可能。しかも無料。
タネを明かせば、GTレシオと呼ばれるミッションはSOHCエンジンを搭載する1800LS用、スプリントレシオは1600LS用のミッション。1800㏄に比べパワーで劣る1600㏄エンジン用のミッションは、それをカバーするためにギヤ比の設定が全体にローギヤーに設定となっている。
いずれにせよ、スペシャルなものではなく、純正を上手に流用してマニア心を満足させるいすゞの手法を現代のメーカーもぜひ見習ってほしいものである。