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【アーカイブ】頭がメンタイコになる!? 日本公開40周年『ドラゴン特攻隊』の謎①

数あるジャッキー・チェン(成龍)出演作中でも極め付きの怪作として、現在でもファンから失笑かつ黙殺されがちなのが、1983年12月17日に日本でも封切られた『ドラゴン特攻隊』(83年)です。

『ドラゴン特攻隊』日本公開時フライヤー

この作品でジャッキーは、台湾での初監督作『クレージーモンキー笑拳』(79年)撮影後発生した失踪事件の禊の意味合いも含め、実際調停に入ったジミー・ウォング(王羽)、そしてブリジット・リン(林青霞)始め台湾のオールスターと共演します。東映の「不良番長」シリーズをモチーフに、台湾独自のジャンルである"黒電影"テイストをピリリと利かせた戦闘アクションです。
日本版では過去の東映配給ヴァージョンと同様、サウンドトラックが制作され、過日10月18日惜しまれつつこの世を去ったもんたよしのり氏(享年72歳)率いるバンド「もんた&ブラザーズ」最後のシングル盤を主題歌と挿入歌に起用。既成曲でありながら、本編の雰囲気にも合致しており大いに盛り上げてくれました。
「デンジャー・ラブ」→音源動画はこちら
「振り向けばジェラシー」→音源動画はこちら

「デンジャー・ラブ」シングルジャケット
「振り向けばジェラシー」シングルジャケット

実は当初この枠は時代劇アクション『成龍拳』(77年)の封切りが予定されていましたが、「正月映画としては暗すぎる内容」として急遽本作に差替えられ、『成龍拳』は84年のGW後にようやく公開されました。

実は『ドラゴン特攻隊』には、前日譚といってよい作品とその姉妹編といってよい作品、更にはスピンオフともいえる後日譚的な作品の計3本の関連映画が存在します。すべて日本では劇場未公開ですが、その内前日譚といえる『アマゾネスコマンドー』(82年)とその姉妹編的1作『セクシー・コマンド部隊/ピンク・フォース』(82年)は80年代後半にビデオ化されています。

『アマゾネスコマンドー』(82年)のビデオジャケット
『セクシー・コマンド部隊/ピンク・フォース』(82年)のビデオジャケット

この2作が制作された頃の台湾映画界は、黒社会(マフィア)が本格的に興行の世界、つまり映画などに参入してきた時期で、やくざ稼業やギャンブラーなど裏社会で生きるしかない男女の悲哀をアクションやメロドラマとして構築し、更に台湾のローカリズムを織り込んだ”黒電影”と呼ばれる低予算のプログラムピクチャーが濫作されていました。”黒電影”は、勃興当初こそ当時の台湾の社会情勢を反映させたような作りになってはいましたが、次第に単に暴力とエロチシズムだけを強調した陰惨なアクション+メロドラマに終始する内容がルーティンとなり、あっという間にほとんどの観客から匙を投げられましたが、それでもふたつの流れに分れ、90年代まで制作が続けられました。
ひとつはより暴力とエロを強調したほぼ成人映画といって過言ではない低予算作品、そしてもうひとつは有名女優を起用し、明朗なムードや喜劇的な要素も加え万人に見てもらえるお金を掛けた大作路線です。実は『ドラゴン特攻隊』という作品は、『アマゾネスコマンドー』と『セクシー・コマンド部隊/ピンク・フォース』を経て、後者に挙げた大作路線のある意味到達点として作られた1作だったのです。(この項つづく)

※本稿は、SNS「Facebook」ホームへ散発的に寄稿した内容を大幅に加筆・修正し、まとめたものです。

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