大喜利について考える 5.大喜利で笑いが起こる仕組み

大喜利において笑いが発生する仕組みを解説するにあたり、

まず「スキーマ」と「認知フレーム」についての説明をしておきたい。


「スキーマ」は認知心理学で用いられる用語で、人が持つ知識の

まとまりを体系化する枠組みである。

人は何かを見る時に、それまでに見聞きした体験や情報を元にして

目の前の現象を理解し、認知する。


例えば目の前に「犬」を見たとしよう。人は犬を見た時に、それまでに

見た事のある犬の知識=犬スキーマが働いて、目の前の犬がどういった種類の

犬であるかを確認(または想像)する。

そして、スキーマを基盤とした”ものの見方”が「認知フレーム」である。

人はスキーマによりその犬の性質を確認(または想像)し、

「認知フレーム」によって目の前の犬がかわいいから近づく、あるいは

狂暴そうなので近づいてはいけない、などの行動を取る。


では、これが大喜利とどう関係するのか?


お題「こんな学校、行きたくないなぁ」どんな学校?


このようなお題が出題されたとしよう。

このお題に含まれている情報は「学校」である。

回答者はおのおの自分が体験した知識により構築された

学校スキーマから回答を考え、回答する。


学校スキーマ…朝礼、授業、宿題、先生、給食、体育館、

       音楽室、理科室、保健室、職員室etc...


回答者は上記のような学校スキーマの中から要素を抽出し、回答を考えるが、

同様に観客も学校スキーマを持ち合わせており、学校とは

こういう場所であるというそれぞれの”見方”=「認知フレーム」が

存在している。平たく言えば学校の”あるある”である。


笑いが発生する回答を書くには、いかに観客の想像を越えた事を書けるか、

すなわち観客の持つ学校の「認知フレーム」からどれだけ逸脱できるかが

重要となってくる。

ただし、逸脱と荒唐無稽は異なっていることも記しておきたい。

観客は提示された回答を自らの「認知フレーム」に当てはめた上で、

それが想像の範囲外にあった場合に笑うのだが、「認知フレーム」と

回答にあまりに開きがあり過ぎると、観客は回答と「認知フレーム」の

関連付けが出来ず、笑いに結びつかなくなる。

(以前、大喜利をテーマに喋った際に作ったものなので、題名などは無視して下さい)

こちらの図で説明すると、中心にある「認知フレーム」から外れた発想を

生み出すのが大喜利の回答作りであるが、観客がその回答を「認知フレーム」

と関連付けして認識できる領域は限られている(この図におけるaの範囲)

bに到達した回答は既知の外側にある回答として受け入れられず、逆に

認知フレームの内側にある回答は”想像の範囲内”として、これも笑いは

起こりにくい。

つまり観客に受ける回答はaの範囲であり、「認知フレーム」ギリギリにある

「想像できるようで出来ない」回答が笑いの起きやすい回答ではないかと

思われる。

当然、観客の「認知フレーム」はそれぞれ異なるという事は、aの範囲も

異なるわけで、aの範囲の公約数的な部分に上手く着地できるかが

爆笑を取るための必要条件となる。

以上、概念的な説明でさっぱり役に立つかどうかは分からないが、これから

大喜利イベントに出場される方はぜひ参考にしていただきたい。

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