大喜利について考える #0
0.大喜利はお笑いではない
皆様は”大喜利”という言葉を聞いて、何をイメージをするだろうか。
「笑点」で落語家が面白い答えを出して、座布団の数を競うコーナー。
「IPPON GP」などのテレビ番組や
「ダイナマイト関西」などの舞台で、お笑い芸人が
フリップに面白い答えを書いて面白さの優劣を決め、
最も面白い芸人を決める大会。
「着信御礼!ケータイ大喜利」のように視聴者が投稿して
芸能人に審査してもらう番組も存在する。
総じて、一般的には笑いのセンスを競い合うための競技として
捉える向きが強い。
元々、大喜利という言葉の由来はブリタニカ国際大百科事典によると
「興行の最終演目の後に、独立して付けられる出し物の呼び名。
大切とも書く。もともとは江戸末期の歌舞伎が、前の筋立てと縁のない
1幕を付け、1日の芝居を明るく閉じるようにしたのが始まり。
転じて寄席で,最終演者 (とり) が終えた後,大勢で珍芸などを
披露することを指すようになり、現在では後者の方が一般的。」
と書かれている。
寄席のみならず落語は歌舞伎をパロディとした部分が多く、
襲名制度も歌舞伎に倣って成立したものとされている。
ちなみに、大喜利は”大切”の切るが忌み言葉とされたための
言い換えに由来する(諸説あり)
寄席における大喜利はブリタニカの記述の通り、興行の最後に
行われる演目であり、その演目は”鹿芝居”と呼ばれる芝居であったり、
音曲や踊りなど落語以外の余芸が披露されてきた。
1966年に日本テレビ系列で「笑点」が放送を開始。
その中で司会の立川談志が出す問いかけに当意即妙な回答を出して
面白さを競い合う”大喜利”コーナーを行った事から、大喜利は芸人が
面白さを競い合う競技の印象が決定付けられる。
その後ダウンタウンが「摩訶不思議 ダウンタウンの・・・」内で
「おもしろダービー」というコーナーを開始。
クイズダービーのルールで、クイズの代わりに回答のセンスで
正解かどうかが決まるこのコーナーで、与えられたお題に対し、
フリップに回答を書くという形式が好評を博す。
その後、「ダウンタウン汁」の「お笑い頭脳バトル」や「一人ごっつ」でも
フリップでの回答形式は用いられ、以後お笑い番組やお笑い芸人の
ライブでもフリップ形式の大喜利は定着する事となった。
時は流れて、2015年現在における大喜利は、「ケータイ大喜利」を
皮切りとして、「ボケて」などのインターネット上での大喜利サイトが
多数存在。また短文投稿型SNS「Twitter」でも
ハッシュタグ機能を用いた半ば大喜利ともいえるやり取りが頻繁に
繰り広げられている。そして、「大喜利天下一武道会」「大喜利鴨川杯」など
お笑い芸人ではない一般の社会人が参加できる大喜利大会が全国各地で
開催されている。
かつてはお笑い芸人のための競技であった”大喜利”は
一般人でも参加可能なフィールドにまでその意味を拡大されている。
そこで、今あえて提言をしたい。
”大喜利”とはお笑い芸人のためだけのものではないのではなく、
言語を共有可能な全ての人間が参加でき、そのセンスをお互いに
共有して評価し合う、現代の歌会のようなものではないだろうか?
センスで優劣を競い合うだけの大喜利だけではなく、互いの表現を
評価し合う事で人と人とをつなげるコミュニケーションツールの
役割になり得るのではないだろうか?
本稿では「大喜利はお笑いではない」という主旨の下、大喜利を
解析しながらその魅力とこれからについて論じていきたいと思う。
「お笑い芸人さんみたいに面白い回答なんて書けないよ……」と
ためらう人にこそ、ぜひ本稿を読んでいただき、「面白そうだから
やってみようかな」と思っていただければ幸いである。
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