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withコロナでDXブームに沸いた2022年の転職/中途採用市場の振り返りとアフターコロナに向かう2023年の予想

はじめに

新年ですので、IT業界での転職を考えている方やIT人材(ここではIT事業に必要なプロダクト職・ビジネス職・コーポレート職全てと定義します)の採用に携わる方のお役に立てればと思い、昨年1年間、同領域で転職支援や採用支援に携わる中で感じたことをシェアしたいと思います。

2022年の転職市場の振り返り

中途採用は即戦力採用と言われますが、より「厳選採用」になった1年だと思います。

尚、自身が採用支援に携わっているのはIT系の事業会社、大手日系企業のIT人材がメインですので、それ以外の領域には当てはまらないケースもある前提で読んでいただければと思います。
※ITコンサル・SIerの企業様はDXニーズが高まっているため、もう少し門戸が広い印象です。

▼厳選採用の背景は?
以下因果関係があると思います。

ウクライナ戦争でロシアの供給制約による世界的なインフレ
&
人手不足による賃金上昇
↓  
インフレ抑制に向けた世界中での利上げ(金利高)

資金調達環境の悪化
&
景気後退懸念
&
株式市場でテック企業を中心とした高成長期待企業の株価下落

企業が将来への投資に慎重になる動きが出てきた
&
赤字でもいいからとにかく急成長を追い求めるスタートアップの経営スタイル(ブリッツスケーリング)が株式市場で相対的に評価されなくなり、株式市場はより黒字経営・利益を評価するようになった

より厳選採用の色が強くなった
 └企業側に育成環境、または時間的・金銭的余裕がないため
 └近しい経験を持っている人を採用した方が企業が成長する可能性が高まるため

▼厳選採用の程度について
では、厳選採用の採用要件はどの程度なのでしょうか?

▼20代中盤〜29歳について
→「①再現性のあるスキル・経験」、もしくは「②ベーシックなスキル・経験+高いポテンシャル」を求められることが多い
印象です。それぞれ解説していきます。

①「再現性のあるスキル・経験」とは?
以下のような事業会社での経験を指します。

例1)エンジニア職
必須:事業会社での自社WEBサービスの設計・開発・運用経験(3年以上)

例2)営業職
必須:SaaS製品の営業経験(3年以上)
   WEB広告営業の経験(3年以上)

②「ベーシックなスキル・経験+高いポテンシャル」とは?
以下のような汎用的なスキル・経験+地頭の良さを指します。

例1)エンジニア職
必須:WEBシステムの設計・開発・運用経験(3年以上)
→開発領域がWEBシステム以外だったり、WEB領域でもToCプロダクトを経験していない/運用経験がない/設計経験がない等ではスキル不足として書類選考でお見送りのケースも多くなります。

例2)営業職
必須:無形商材の営業経験 (3年以上)
(求人票には表記されていないことも多いですが、+ 高い営業実績)

しかしながら、2022年には②の要件でOKだった企業数は減少傾向で、最低でも①の要件を求めたい企業数が増加傾向となっています。

▼30代以降
→必須「再現性のある高いスキル・豊富な経験」+歓迎「リーダーシップ」を求められることが多い印象です。(年齢に比例して企業が求職者に求める要件は高くなります。)

例えば以下のように要件が20代と比べて高くなります。

例)エンジニア
必須:事業会社での大規模な自社WEBサービスの設計・開発・運用経験(3年以上)

歓迎:テックリード、PM、エンジニアマネージャー経験

例)営業
必須:SaaS or WEBサービス運営の事業会社での営業経験(3年以上)

該当企業より大きな事業・企業フェーズでの実務経験、もしくは同様の事業フェーズで成果を出して成長(1→10、10→100)に貢献した経験

歓迎:リーダーやマネジメント経験

例)経営企画
必須:コンサルティングファームでの戦略コンサル経験(3年以上)+ICT業界でのコンサル経験
or
IT事業会社での経営企画経験(3年以上)

歓迎:プロジェクトリーダーの経験

2023年の転職市場の予想

それでは、今年はどうなるのかと言うと「厳選採用」は継続する、もしくは更なる厳選採用になると思います。
理由は、2022年の振り返りで記載した社会情勢が今年も継続すると思うためです。

良い転職機会を掴むために個人が今からできること

では、このような転職市場において求職者様が自身のニーズ確認や市場価値を把握するには何をすると良いのでしょうか?
一つの答えとしては、キャリアの健康診断として職務経歴書を毎年更新してスキル・経験の棚卸しを行い、ビズリーチ等のスカウト型の転職サイトに登録してスカウトを受け取ってみること、またヘッドハンターの方ともお話をする中で自身の強み・アピールポイントや磨くべきスキルを明確にしていくことが有効かと思います。

もちろん現職でキャリアアップをできるのであれば、転職をする必要はありませんし、定期的に転職市場に触れておくことで自身の現在地やマーケット状況を把握しておくことが重要という意味です。

なぜそれが重要かと言うと、ある企業に勤務していて35歳や40歳になった時に市場で求められるスキル・経験を積んでいないと転職の選択肢が少なくなるためです。

実際に40歳を超えた時に高い専門スキルかマネジメント経験を持っていない方は、企業側の採用ニーズも減っていき転職難易度が上がります。

2022年の中途採用市場の振り返り

次に企業様目線での中途採用市場について振り返っていきたいと思います。
ズバリ、2022年はDX需要の増加とIT人材の供給不足による「異業種間の採用競争の本格化」が起こった1年だったと思います。

▼異業種間の採用競争の本格化とは?
私の見立てでは以下要因によりこれまでIT人材を採用していなかった大手企業がIT人材の採用を本格化し、またコンサルティングやSIerの企業も採用を増やすことにより、需要側が増えて採用競争が激化したと思います。

・2020年のコロナショックによりリアル産業の多くが売上減となり、事業モデルの転換を迫られ、DXブームに火が付いたこと
・異業種からの参入で業界間の境目がなくなってきていることや海外企業とのグローバル競争により、企業の生存競争への危機意識が高まったこと

例えばメガベンチャーと言われるIT企業から大手日系企業やコンサルティング企業への転職も増えています。

また、そういったメガベンチャーにいて各企業が求めるミドル層の求職者の方だと30代以上になり家庭を持っている方も増えるため、スタートアップに挑戦するとしてもそもそもスコープに入っている最低ラインが新興上場で売上50〜100億円以上といったケースが肌感7〜8割位というイメージです。

※参考データ
パーソルキャリア株式会社のdoda 転職求人倍率レポート(2022年11月)によると、求人倍率はエンジニア(IT・通信)は10.45倍、専門職(コンサル・金融)は6.29倍、企画・管理は3.48倍、営業は2.33倍でした。

2023年の中途採用市場の予想

今年もIT人材の「異業種間の採用競争の激化」は継続すると思います。
理由としては、企業経営におけるデータ活用、IT活用による業務の生産性アップは売上増、コスト削減どちらにも寄与し、DX投資は今後も重要だと捉えている企業が多いためです。
もちろん今年はアメリカ・欧州発の景気後退(リセッション)の可能性が叫ばれており、そのあおりを受けて日本企業も業績悪化となり採用を抑制する企業も増えるかもしれませんので、景気後退の程度が大きくなればその限りではありません。

良い採用を実現するために企業が取り組むべきこと

自社の現状、競合状況、市場環境を把握した上で、各社の課題に合わせて以下事項に優先順位を付けて取り組んでいくことが重要かと思います。

・経営課題に対して求める人物像、採用ポジションの明確化
・求める人物像に合わせて複数の採用手法(スカウト型媒体、エージェント、求人広告など)を組み合わせて行うこと
・求める人物像の求職者の方が気にするポイントに対して自社の魅力を整理し、採用広報していくこと
・求職者体験を向上するためのオペレーション設計と遂行

まとめ

2023年の転職市場のキーワードは「厳選採用」、中途採用市場のキーワードは「異業種間の採用競争の激化」。どちらも難易度が上がっていることを認識して、マーケット状況や相手への提供価値を意識して活動していくことが重要だと思います。

今回は以上になります。
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