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さよならだけが人生だ

たいそうなタイトルだ。

注意 : 動物を見捨てた話がでてくるので嫌なひとは読まないでください。

危ない状態だと連絡がはいり、遠くにいる会ったこともない人を心配する。ずっと一緒に居たひとが最期までみてくれると知ると全員がこれまで以上に感謝した。死亡時刻とその後のことが知らされ、みんなが一斉に祈る。そのなかに”これで幸せになると思います”というコメントがあった。

離れたところから、みかんや里芋など美味しい箱が届く。お礼の電話をすると、あまり良くないらしいとしばらく会っていないひとの容態が知らされる。

月曜日あたりから喉の痛みとダルさが続いているのは、久しぶりの旅行ではしゃぎすぎた反動かもしれない。今月の初めにワクチン4回目を接種したばかりだ。検査結果は陰性だったし発熱もない。だけどなにかスッキリしない。

眼鏡をかけないと世界がぼんやりと見える。
旅行出発前日。お土産などを買い込み、日が落ち暗くなったので家路を急いでいた。車の往来のある狭い道の真ん中になにか動いている。猫がよくウロウロしている通りだったので寝転んでいるのかと思った。いつもの調子で近づいてみると、猫は仰向けでピクピクとなったままの状態。よく見ると血が大量に流れ広がっていた。両手に荷物を持ち、どうしたらいいのかわからず立ち尽くす。猫が好きだけど、単に愛でているだけの情けない人間なのだ。車に轢かれた動物を見つけると、これ以上轢かれないように安全な場所に移動させて出勤してくる子がいたのを思い出す。

私以外にも歩いている人たちがいた。でもだれも気付かない。私は手を合わせ深呼吸して猫を見捨てて歩き出した。ひどい人間だ。車のライトがやたらとまぶしくて目が痛い。もし人間だったら、対応は違っただろう。”命は等しく重い”論争を思い出す。

今日、出勤時にその道を歩いた。
なにもなかった。
自分の卑劣さだけが残っていた。


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泉
読んでくださりありがとうございます。