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【活動録】第16回カムクワット読書会/古本読書会
本日は芥川賞候補になっている乗代雄介さんの『それは誠』を課題作品に、久しぶりの喫茶店にて開催。参加者は3名、全員リピーターで2人は初対面でした。
課題作品読書会
最初期のカムクワット読書会に参加したことがある方ならご存じ、あの喫茶店にて開催。先に座席を確保したわたしは、モーニングを食べながらゆっくりと参加者を待ちました。
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課題作品は『文學界2023年6月号』に掲載された上記の作品。単行本化前に読書会を行えて一安心です。
2名の方は「はじめて文芸誌を読んだ」と話されていて、カムクワット読書会が文芸誌を楽しむきっかけになれば嬉しいです。
さて、本作品の感想で共通したのは、主人公の誠が手記を始めるまでの導入に読みづらさを感じた点です。それは、おそらく彼が混乱した状態であることの証左では……と、いまは感じています。
物語は「子供ー大人」、「男子ー女子」の距離感が保たれている点にリアリティがある。学生をコントロールしていると考えている教師たちと、コントロールされたふりをする生徒たち。誠と高村先生や蔵並から高村先生へのあこがれ、誠から小川楓への思い。
そして、修学旅行を通して見えてくる班員たちの暗い側面と変化。
冒頭の独白のなかにある
友達は俺と僕と私だけ。
https://note.com/bungakukai/n/ne1a11be4ef3e
から、この一人称は誰を指しているか疑問を抱いていました。話しているなかで、「今とこれからの誠」の変化を表しているのでは……という考えが浮かびました。
それは、芋虫が蛹になるときにドロドロに溶けて、それが蝶へと変態するかのように。
また、誠の手記にある班員たちの呼び方で、小川楓だけがフルネームである点も指摘されました。これは思春期ならではの感情か、ファンからアイドルへのあこがれか。わたしからすると、非常になつかしい感情です。
最後に、おじさんから誠への伝言。「それは誠」と「強い男」という言葉。これが伝聞形式のため、区切られていた。これは、おじさんが歌なら吃音が出ないという点から歌詞を調べたところ、奥田民生さんの「花になる」からの引用であることがわかりました。
ならべて書くと、あからさまな引用としてJASRACに引っかかると考えたのか、あるいは読者に歌そのものを意識させないためか。
しかし、この歌ことがおじさんから誠へのプレゼントなのかもしれません。
現段階では受賞レースの結果はわかりませんが、読みやすく面白い。その点では、他の作品と遜色ない、もしくは抜きんでているのではないかと感じました(わたしは3/5しか読んでいませんが)。
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テスト企画 古本読書会
何の準備もせず、読書会に参加してくださった方に「読書会後に古本屋(BOOKOFF)に寄り、買った本の紹介・交換しませんか」という誘いを、数日前に送りました。
ありがたいことに、今回は3人とも参加してくださいました。
反省点
特に何冊を買うか、制限時間などを決めなかったため、時間的余裕がなければ難しいかもしれない……と感じました。もしくは、最終ゴール(紹介会場)までバラバラで行動する形式が良いかもしれません。
個人的には非常に楽しかったですが、他の方が「長すぎる」や「欲しい本が見つからないな」など、どのように感じたか知りたいところです。
BOOKOFFめぐりと遅めのランチ
わたしは5冊購入。3冊は自分用に、2冊はプレゼント用に。
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自分用には
フランチェスコ・アルベローニ『エロティシズム』
津原泰水『蘆屋家の崩壊』
希『妖姫のおとむらい』
積読している澁澤龍彦の『エロティシズム』と比較するため、他は最近気になっている幻想文学作品である点などから選書。
プレゼント用には
宇佐見りん『推し、燃ゆ』
古市憲寿『アスク・ミー・ホワイ』
前者はあまりにも有名ですが、未読の方に読んでいただきたかったから。後者は男性同士の恋愛が描かれているけれど、嫌味がないため。
参加者が男性だったため、あまり手に取らない作品かもしれないと考えたからです。
BOOKOFFめぐり後、ガストにて遅めの昼食。食後にお皿をさげていただいてから、紹介やプレゼントを行いました。
わたしは福永武彦『草の花』。池澤夏樹さんの父親であることを知りました。これは驚きです。
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他の参加者の方々もそれぞれ本を購入し、(特に全員に渡すように決めていませんでしたが)ひとり1冊ずつはプレゼントが手元に渡ったので、面白い試みだと感じました。
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帰りには紀伊國屋書店~地元の書店など
横浜駅に戻り、帰る組と紀伊國屋書店組にわかれました。大きな書店の魅力のひとつ、それはサイン本です。なかなか手を伸ばさない作家さんへの導入になりますね。
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わたしもサイン本があるから読み始めた作家さんがいます。願わくば、転売ではなくて、そのような形で利用されてほしいものです。
紀伊國屋書店では「おすすめのホラー作品」を尋かれ、河出文庫の尾崎翠作品か澁澤龍彦を探したのですが見つからなかったので、角川ホラー文庫と『夜市』をおすすめ。お店に在庫はありませんでしたが、それこそBOOKOFFで見つけやすい作品なので、手に取っていただけると嬉しいなと思います。
地元に戻ってから、ハヤカワ新書から1冊、角川文庫のスペシャルカバー仕様を2冊買い、個人経営の古書店では柴田元幸翻訳作品を均一棚から購入。
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1時間の道程を歩き、タワレコからセブンイレブン受取にしていたTKさんのエッセイを入手し、足を棒にして帰宅しました。
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次回の予定
次回は7月22日(土)に、ことばと新人賞の福田節郎『銭湯』を課題作品に開催予定です。現時点で3名が参加、1名が参加予約。そのため、貸会議室を使用します。
午後は昼食とアフタートークを行う予定です。お時間がある方は、そこまでご参加いただけると幸いです。
8月の読書会――課題作品にしたいカムクワットな小説はありますか?
現時点では8月26日(土)に開催予定です。今後も第四土曜日に固定できればと考えております。
課題作品は文芸誌時点で、2人読書会になった千葉雅也さんの『エレクトリック』が単行本化したので、リベンジしようかと思っています。
もしくは、他の作品……と迷いもあります。候補のひとつは『MONKEY』ですが、こちらは翻訳かつ古めの作品なので、カムクワットではないという悩みがあります。
ぜひ、おすすめ/課題作品にしたいカムクワットな小説(3か月以内の文芸誌掲載、1年以内に刊行された単行本)があれば、ご紹介いただけると幸いです。
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