【活動録】第25回カムクワット読書会
本日はディーノ・ブッツァーティ『タタール人の砂漠』を課題作品に、読書会を行いました。
参加者は初参加が二名、先月から連続の方が一名。読書会を主催している方、読書会自体が初めての方がいらっしゃいました。
ディーノ・ブッツァーティ『タタール人の砂漠』
たんたんと語られる砦での日々には、「目的」が欠けているように感じる。
「カフカの再来」や「幻想文学」と称されているが、そのまま受け取りづらい面がある。
カフカの『城』と比べると、城の中を目指したカフカと砦の中から外を眺める点に差異がある。しかし、そこで受けるお役所仕事的、軍隊規律的不条理は類似していると言える。
参加者の方がブッツァーティ『神を見た犬』を「ハイテンションなカフカ」と称したように、どこか通底している面がありそうだ。
幻想文学については、そもそも何が「幻想」かという問題がある。ファンタジーなのか、マジックリアリズムなのか。
ブッツァーティ『古森のひみつ』では、風や妖精と会話をしていて、超自然的な存在が受け入れられている。『タタール人の砂漠』では、アングスティーナについての夢が、ある種の暗示、幻想として読めそうだ。
作品全体をひとつの寓話とした場合、カフカの長編の主人公は空回りしている場合が多く、『タタール人の砂漠』の登場人物は何も起こらないだろうという諦念が根底にありつつ、何かを願うが行動を起こさない。
結果としては、人生のままならなさを共通して描いていると結論付けることもできそうだが、そんなに単純な結論に違和感を覚える。
とにかくわからないこと、20世紀の文学的謎を残したカフカ。
しかし、それは読者が深読みをしすぎているのかもしれない。あらゆることに意味を求めて、そこから推論を重ねて現実ではない夢の世界を呼び寄せる。
答えはわからないが、そのような想像することだけが、読者に許された行為であり、読者の自由であると思う。
今後の予定
次回は4月20日(土)10時半から川野芽生「無茶と永遠」(『すばる2024年4月号』所収)が課題作品。現在、1名の方が参加予定なので、まだまだ参加者を募集中です。
また、イーグルトンの『文学とは何か』を精読する会をオンラインで実施を企画しております。
よろしくお願いいたします。
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