深い底に刺す、光
『ラブカは静かに弓を持つ』を読み終わった。
チェロ教室が舞台で、いくつかの楽曲が出てくる。
中には創作のものもあったが、バッハの無伴奏曲はCMやテレビなどで
聴いたことがあるアレだった。
https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/rabuka/
ヴァイオリンよりも大きな木の楽器から、空気を振動させて奏でられていく音たち。
たまたま聴いた日が、雨の中予定があってどうしても行く必要がある。
そこで体力・心理的にもとても疲れてしまっていた日だったのだけど、
疲れ果てた帰宅後に聴いてみたら、気分が落ち着いてきたので、びっくりした。
全くそんなこと期待してなかったのだけど、
聴いてすぐにささくれだっていて、イライラしている気持ちがスッと消えていったのだ。
静かな奥深い森の中で、空気が澄んでいて気持ちがいい。
歩いていると木が生い茂っている隙間から、日差しが差し込んでいる場所が見える。
なんて綺麗なんだろう、あそこに行ってみよう。
と、歩き出していくイメージ。
作中にテーマとして出てくるラブカとは、真っ暗な深海に棲む
醜い深海魚だ。
深い海の底に漂う深海魚と作中に出てくるスパイ映画の主人公、
そして過去から抜け出せない主人公と重ねており、
チェロを通して、真っ暗な闇に光が差す物語だった。
最後の収束が若干弱かった気もするが、読んでいる間はチェロの深い
音色が響いているようで、寝る前に読むのにぴったりであった。
チェロは習うのハードル高いそうだが、機会があったらトライしてみたい。
そんな風に思う。
当面はチェロのCDを初めて買ってみたので、じっくり聴きこんでいこう。