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1枚5円の、袋を1枚ください

ここ最近、身近の友達夫婦や知り合いご夫婦を見ていたり話していると、そのふたりが持っている”袋”が透けて見えてくるようになった。

それは、こだわりのエコバックだったり、デパートの紙袋や、本屋さんの袋だったり、さまざまな種類がある。

ちなみに、我が家はマルエツのビニール袋(Lサイズ)だ。
今いちばん身近で、毎日使っているアレ。
マルエツの袋には、ふたり分の昼の弁当の他、夕食の材料、明日の朝用のパン、晩酌用のチューハイやビールが、雑に放り込まれている。

オットとともに会社員であるが、揃ってリモート勤務なので寝室と子ども部屋に分かれて日中は過ごす。
昼前に、どちらかがお弁当を買いに行き二人で朝ドラを観ながら食べ、少し話してそれぞれの部屋に戻り残りの休憩時間を過ごす。
(大体、夕食の買い物もあるのでマルエツが7割)
私は本を読み、オットは昼寝。
リモートワーク4年目でこのスタイルに落ち着いた。

夜は、録画していたTVドラマを見ながら晩酌したり、塾帰りの子どもの勉強を少し見たりなんかして。
これが平日の通常運転の1つとなっている。

会議が終わってすぐマルエツに走るので、エコバックは大抵忘れてしまって、ビニール袋のバーコードをセルフレジのスキャンに通す。
―ピッ
我が家の生活がそこに詰まっているのだ。
あぁ、あの時はマルエツばっかり行ってたね、と人生の最後に振り返って笑うと思う。

子どもの友達家族と食事したり、複数家族での飲み会や、学生時代の
友達との忘年会などで、それぞれの近況や家族の話、仕事の話なんかを聞いていると袋のイメージが膨らんでいく。
いつも同じではなく、時期によっても違うので、会うたび変わっていくこともあって興味深い。

一時期は袋が破れてボロボロだったのが、しっかりガムテで補強され、なんなら以前より丈夫になっていたり。
子どもの頃から大切にしている幼馴染の袋を、今では旦那さんも一緒になって大事に使っていたり。
ずっと若い頃はおしゃれな編み目のカゴバックだったのに、今は毛糸で出来た布で包まれていたりする。

もう袋が破けて半分になりそうだけど、なんとか繋がっているものもあれば、無駄に大きくて重かった袋をバッサリ切って、やりたかったように自由にアレンジしている袋なんかもある。

夫婦それぞれの袋は、包んだり中に入れたりできて、ふたりの歴史とか日常・生活からにじみ出てくるものがある。たとえ、本人たちが話している内容と袋がかけ離れていることもある。
ごく自然に、ハンターハンターの念能力みたいにそのふたりを表している。

こないだ、施設にいる母に会いに行った。
元気であるが、今も亡くなった父のことをちょっと旅に行っているかのように話すことが多い。

『どうしてあんな病気になっちゃったんだろうねえ』
『いま、お父さんは何しているのかな』

母と父の袋は、町会でもらえる藍色の手ぬぐいを繋げて出来た袋で、お線香の香りがする。
そして、手ぬぐいからほつれた糸が1本、空に伸びている。いつか、袋がゆっくりと空に飛んでいってしまうその日まで、母の好きなものを中に入れてとどめておきたいと思う。

私は今年で、結婚して14年目になった。
恋人たちから、新婚を経てオットとツマとなり、子どもも生まれて全員が家族の一員になった。
同じ食べ物を食べ、同じ洗剤で洗濯し、同じベッドで眠る。
家族の誰かにトラブルが起きたら、協力して穴を防ぎに行ったり袋を取り換えてみたりする。
当たり前のように。
関西ではパートナーを相方、って呼ぶってのがしっくりきている。
同じ袋に入っている家族であり、子どもを安全に育てシアワセにするための同士だ。


今の、マルエツのビニール袋もこの先変わってくるだろう。
子どもたちがそのうち巣立って、二人分の少しの食料になったり、もう脂っこいものは買わないかもしれない。
ビニール袋じゃなくなるかもしれない。

でもきっと、その時も持ち手を半分ずつもって、あーだこーだと言いながら、ふたりで買い物に出かけていたい。

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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