振り回されている心に気づけない人
自分のやっていることは当然自分で理解している。そう思っている人が大
部分だろう。でも、知らず知らずのうちに振り回されていることに気づく人
は少ないと思う。
横断歩道で人間観察
横断歩道。青信号が点滅し赤信号に変わろうとしている。そんな時、急い
で渡り切ろうと横断歩道をダッシュする人がいる。渡っている途中であれば
理解できる行動だ。しかし、横断歩道の手前数メートルから渡ろうとダッシ
ュしている人がいるのだ。
目的地まで早く着きたいからだろうかと考えた。多分、違う。なぜなら渡
った後は、ゆっくり歩いていたからだ。他に理由を探してみたが、思いつか
ない。
行動までの心の動き
急がないのであれば、無理して渡ることの危険性、例えば車との接触や転
倒を避けた方が賢明だ。なぜ、立ち止まり青信号を待てないのか。
赤に変わろうとしている信号は認識した。それでも、ただダッシュすると
いう条件反射になっているのだと思う。ここで欠けているのは次のようなこ
とだろう。ある認識があったら、次に自分と周囲の状況を理解して、その時
どうすべきか、はっきりさせるという心の動きだ。これは、心の舵を自分で
操作すると言ってもよいだろう。
振り回される人
馬の合わない上司がやってきて仕事の話を始めた。それって詰問ではない
か。むっとしてつい言い返した。いい結果にはならなかった。話は収束せず
イライラを残しただけ。上司も同様だっただろう。
サラリーマン時代は、上司と衝突を繰り返していた私がいた。仕事の話で
あることは認識している。しかし、上司の話の内容を理解したり、どんな気
持ちか観察する以前に、「嫌いだ」という感情が湧きあがり、冷静にうまい
落としどころに持っていくことは少なかった。うまく心の舵を操作できなか
ったのだ。
なんだか、横断歩道の手前数メートルからダッシュする人に似ていると思
う。ダッシュする人は、心の舵を信号機に握られている。上司と衝突してい
た私は心の舵を感情に握られていた。
他者の言動にも振り回されやすい人も、横断歩道の手前数メートルからダ
ッシュする人に似ていると思う。心の舵を他者の言動に握られている。もう
少し細かく観ると、他者への依存心や他者に対する思い込みに握られている
ということになるだろう。
振り回されなくなるのは難しい
自分で決めたと思っていても、そう思っているだけで、心の舵を他にゆだ
ねていることがあるのではないか。心の舵を自分で握っていない人は、その
ような「自覚」が欠けているので振り回される自分から脱出することは難し
いと思う。
ゆっくり動く
外出した時には、状況によるが、努めてゆっくり歩くことにしている。と
きには空気を肺いっぱいに吸い込み、ふっと吐く。緊張していた身体の部分
が、少しは楽になる。こうしていると、周囲の情景が鮮明さを増す。
猫背でスマホに目をやりながら歩いている人がいる。スマホに振り回され
ているんだろうと想像する。
険しい顔で先を急ぐ人がいる。周囲に気を配ってはいないだろう。さて、
自分はどうだろうか。
そして、観えてくるもの
ゆっくり歩くときには、「ただ歩いている」。何かを観察しようとしたり
、何らかの効果を期待することはない。
ゆっくり歩くことを続けていると、徐々にではあるが「周囲」がよく観え
てくる。すると、ふっと自分の心の状態に気づくことがある。これが、振り
回されている自分から脱出するきっかけとなると思っている。
心は元々振り回されやすい。振り回されているときには、その自覚がない
。だから振り回される。こんなループを断ち切るのはたやすくない。でも、
方法はあると思っている。私にとって、ゆっくり歩くことがその一つだ。
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