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退職後、ストックフォトを始めたときの困惑

 小さな新聞記事に、趣味で撮りためていた写真で収入を得ている人が紹介
されていた。ストックフォトというサービスがあるということを、この時知
った。
 趣味の写真が収入につながるとは幸い。退職後、ストックフォトを始めて
みた。また、趣味の写真をただの自己流でなく、もっと学びたいと思い、カ
ルチャーセンターの写真教室に通い始めた。しかし、そこで「写真」という
ものが分からなくなった。

ストックフォトは商品

 新聞記事を読んだとき想像したのは、趣味で撮った写真であれば何でもス
トックフォトになり得るということだ。これはとんでもない間違いだと、ス
トックフォトを始めてみて気付いた。肖像権や著作権の問題がある。それら
の問題がなくても、買ってくれる人のニーズを満たすものでなければ売れな
い。

ストックフォトと趣味の両立は難しい

 ストックフォトにおいて、稼ごうとするならば、購入者はだれなのか、い
つどのように使うのか。それを分析したり、想像したりして撮らなければな
らない。それは趣味としての写真をつまらなくさせる。

 趣味は、それをする過程が楽しく愉快なものだ。だから、急いだり、結果
を出す手段にするとつまらなくなる。

求めていたのは「作品」だった

 写真を撮り始めたのは中学生の頃だったと思う。日常や旅行先の風景を主
に撮ってきたが、それは記録的な意味合いが強かった。そのうち「いい写真
」を撮りたいと思うようになった。でも、エンジニアを目指して、就職とい
う形で夢をかなえた時期に、それはおざなりになってしまった。
 退職して写真教室に通い始めたのは、若いころ求めていた「いい写真」と
いうものを追求したかったからだ。写真教室で学ぶうちに明確になったのは
、求めていた「いい写真」とは、写真展でみる「作品」であるということだ
った。

過程や目的が異なる

 ストックフォトの目的は売ること。そのためには、ダウンロードされる写
真のニーズ分析が必要だ。ニーズを定めたうえで何を準備し、どう撮るのか
を考える。撮った写真は売れる可能性の高いものを選ぶ。見栄え良くするた
めに、レタッチで明るさなどを調整し、ごみなどの不要物を消す。そしてサ
イトに投稿する。というのが、おおまかな作業だ。

 「作品」作りの目的は、表現力を高めることだと思っている。写真教室で
他の生徒さんたちの「作品」を観たり、先生からの講評を糧として撮り方の
創意工夫を重ねている。写真展に足を運んだり、写真関連の書籍で学ぶこと
もする。
 観てくれる人のニーズなんて考えない。一般受けする見栄えではなく、自
分が感じたものを表現するが、どちらかというと暗めの写真になることが多
い。レタッチは基本的にしない。しても最小限にとどめる。

写真を愉しむ

 撮った写真が生活の足しになるようなお金を生めばラッキーだが、そのた
めには、稼ぐことに多くのエネルギーと時間を費やさないといけない。退職
後、写真で稼ごうと思っていた時期があって、その時は写真を撮るのがおっ
くうになってしまった。
 ストックフォトを始めたが止めてしまった人は多いような気がする。愉し
もうと始めた写真は、ストックフォトの写真と大きな乖離があることに気付
けなかった人がそうなるのではなかろうか。

 写真教室に通って三年目くらいから写真のバリエーションが理解できるよ
うになってきた。ストックフォトの写真と「作品」としての写真は異なる。
だから、「作品」作りを主として、その合間にストックフォトの写真を撮る
ようにしている。ストックフォトで稼ごうという気もないので、写真がつま
らなくなることがない。


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