なぜ公文式の指導者になったか?
2022/3教室だより
3月になりました。入学、進学の季節が近づいてまいりました。
私が公文式指導者になった理由をお伝えすることで、公文式に抱く印象というのを少し見直してもらえたらうれしいなと期待しております。
例年、公文から塾へ切り替える方が多い時期ではありますが、公文式のことを知らないまま、中学生からは塾でしょ!と思わないで、一度考え直してみていただくことも良いかもしれない、と思います。
いつもは一般的な話をすることが多いのですが、今回は思いっきり、公文式数学に舵を切ってお伝えします。保護者の皆様、引かないでくださいね。引いても良いのですが、嫌わないでください。
1.私が一番公文式で気に入っている教科は数学
一般的に教科だけを見ると、できる子とできない子で、一番差が付きやすい教科は何より数学かなと。
小学生までの算数と、中学生からの数学、どちらかというと、数学の世界の方が差が付きやすいです。
高校での、カリキュラムが、多すぎるんです・・・
トップの画像をみていただければ分かるとおもうのですが、高2、高3の選択科目の量!(数Ⅱ、数Ⅲ)この量を理系に行くと決めたならば、できるようにしていかなければならないのです。
中学まではそこそこ、数学もできていたという子も、高校数学の上の方で諦めたくもなる・・・習得するのには、時間に対して演習量が確保できない。中学、高校生活、楽しいですよね。エンジョイしつつ、こういう学習の時間は相当の覚悟が無いと取れないもの。
文系でもいいでしょう。私も法学部です。ずっと高校前半まで数学は得意な方でした。でも、その上の選択制の数学ができなかったら文系一択になること、進路や将来の就職先の幅は当然狭まることは理解しておかなければなりません。人生、どうあがいても、それまでの生き方で選択肢が狭まる瞬間があります。
英語も数学と似ているイメージ。でも、日々仕方なくでも、使う状態になれば、おのずと慣れるのが英語であるのに対し、数学は慣れる前に諦めてしまいがち。
海外に行くと、帰国子女が多い学校にいると、仕事で毎日英語の会議に出ていると、なんとなく英語しゃべってみようかという気持ちになる、でも数学はそうはいかないな、と。
私は大学の後期の2次試験で大して得意でもない英語の小論文を書かないといけなくなってしまったのですが、基礎英語を駆使して、何とかなった思い出があります。何がテーマだったかも忘れましたが、良いこと書いたな!と自負した記憶があります。きっと、何とかしようと思ったら、短期間でもできるのが英語です。
公文式のすごいところは、高校にギュッと凝縮されている学習のカリキュラムを前倒しで学習をすることができるところ。小学生で中学生の学習が終われば、中学生になれば、高校の数学に入ることができるところです。
公文式の指導者になったのは、この逆算の考え方でカリキュラムが作られているところに感動したからです。これは、自分が学生時代に持っていた課題意識を解決するものだ!!と驚きました。(もちろん公文の良いところは、それだけではなくて、他にもありますが、一番はこの点です。)
2.なぜ、公文式?
ここを理解するには、公文式のトレーニングは何かを正しく理解しておくことが必要です。
『公文式は学年を越えて進んでいく教材』それは皆さん、ご存じ。
高校数学のメリットも1でお伝えした通りです。
小学生のうちに中学、高校教材を学習するには、公文式でそれなりのトレーニングをしていないと、できないものなのです。ここが分からず、公文はただ進めばいいと思ってしまうと、公文の正しい利用はできない。大事なのは、自分で考えない子を作らない、なんでも教えてもらおうとする状態にしないこと。
教室で全く教えないのとは違います。公文式で、教えるというのは、その子の頭の使い方を調べて、それにあった教え方をする。あくまでも個人別にどう教えたら、次の新しい問題で自分で考えられるようになる子を育てるか?そういうことを考えて、公文では子どもに新しいところへのかかわり方を教えるようにしています。
自分で考えない子というのは、賢い状態になっていないので、結局、前倒しで学習することは難しい。自分でどんどん先に進んでいくことで、小学生で高校数学ができるような状態になる。
これは、突然、ポンとできるようになるものではなく、そこに向かって数年、トレーニングしてきているからこそ、実現できる。トレーニングと言いました。これは訓練だと思っています。公文のCMのように、公文の先生がコーチのような気持ちで能力、メンタル、意欲を見ながら、進めていきます。
こういう面白い学習法が『公文式』なのですよね。だから、公文式でなければ、ここまで前倒しで学習できる学習法は成り立たないと思います。1,2年前倒しくらいは早熟な子にはできますので、その程度では、うちの子天才と思ってしまわないようにしてほしいです。
3.公文式を順調に学習するためには、何が大切なのか?
少しでも例題を見て自分で考えようとする姿勢を『育む』ことが大事なんです。何より、できるかできないか、というより『チャレンジ』してみようとする気持ちが。。この点は、国語も、英語も同じ。公文式の幹となる考え方。
それを奪ってしまっている気がするかかわり方は、公文式の学習で一見どんどん進んでいるように見えても、最後は『破綻』します。
(ごめんなさい、分かりやすいようにわざと怖い書き方をしてしまいました・・・)
公文式教材(算数・数学)での例題の数を見てみてください。
教材が上がるほど、例題がどんどん多くなる。
そういうものなんです、段々、数学の世界は、レベルを上げるごとに、自分で知っていること、できることを積み重ねて、どんどん新しいことを習う教材と変わっていきます。
A教材のような足し算教材の時のように、同じことを繰り返すというイメージでは無くなります。基礎的なことはしっかり固めて、あとは、色々なバリエーションの問題に対応していく力を養っていくのです。
正直、E教材以上になると、例題が増えて、自分で考えなければ、先に進めず、足踏みが始まります。そのころには、論理的に考える力、自分なりに筋をまとめる力(抽象化)のようなものが育っていないといけません。
算数のみ学習中の子で、数の操作は得意、数が大好きだけど、直感的、というお子さんは、この種のつまづきに要注意です。
最初は、ものすごい勢いで進みます。だって見方によっては、単純作業だから・・・。
ただ、どこからか、自分の頭で整理をするのが難しくなる時が来てしまう。
論理的に考える力、自分なりに筋をまとめる力(抽象化)をどうつけるか?
それなりに、先取りをさせようと思えば、単に算数のプリントをやらせるだけではだめ。
1年生の子が6年生の算数を解こうと思ったら、そこに近いレベルの国語の力が育っていることが理解を助けてくれます。
だから、まずは国語なんです。
国語の力は、考える力と直結しています。
先の教材を解いている子たちの話し方
幼児さんが分かりやすいと思うのですが、非常に大人びています。
私に対して、臆せず話せる、率直、素直です。
こちらが何を言っているのかちゃんと理解できているから、それに対する受け答えも、まるで大人。
その子が頭の中でどういうレベルのことなら処理できるのか?大体話していると分かります。
感情が整理できず、ぎゃーっと泣くタイプの子も、論理的に考えるのが苦手な傾向にあります。もしそういうタイプのお子さんなら、ぜひ、国語から始めてほしいです。
4.公文式と子どもの成長は長い目で見守ってほしい
何より一度お伝えしたいのは、周りが焦って成果を求めすぎない、ということです。
過去に、中2で入会されたAちゃんというお子さんがいらっしゃいました。
九九からできず、勉強が嫌いで、行く高校も無さそうだと言って仕方なく公文に来ていただいたようでした。
そのお子さんはB教材(2年生相当)からスタートしました。
ドラゴン桜にもありましたが、数学が苦手になるのは、足し算等の基礎的な計算の力が不足していること。
できるのですが、スムーズではないというか、スラスラとできるレベルではないという状態。そういうレベルのまま、数学の世界に突入すると、分かる、できるのだけど、ケアレスミスが多かったり、解くのに時間が掛かってしまったり・・・
Aちゃんは、B教材の足し算の筆算からの学習でしたが、一生懸命頑張りました。毎日たくさんのプリントを解きました。計算力はだんだん向上して行き、気付くと、数学の世界に入っていました。
どこにも行くところの無いと言っていた高校進学でしたが、ちゃんと一般の学校に入学しました。Aちゃんのすごかったところは、高校に入っても公文を続けたことです。
決して、勉強が好きでも得意でも無かったAちゃんが、数学は得意!となりました。公文の数学を最終教材まで学習したのです。
3年後、Aちゃんは4年生大学の理系の学部に進学しました。
その後、研究コースまで学習し、今年、就職先が決まったと、ご家族から教えていただきました。
人生を変える公文式です。
途中、ご家族は心配して、塾の体験や夏期講習などにも行かせてみたそうですが、どれも挫折・・・自分のペースで学習できない塾のやり方がAちゃんには合わないとのことでした。
この子は中学生からのスタートでしたが、自分のペースでできていないところを基礎からしっかりやろう!という気持ちがあったので、最終教材、研究コースと進むことができました。
時に、失敗する場合もあります。
同じように中学3年生、有名私立中学校に通うBちゃんという子、数学が苦手と言って、来られました。定期テストで良い点が取れるように、という気持ちが強く、今思えば、できていない基礎から、というより、ここまではできますという意識が高かった。中学数学を解いてもらったら、正直、うちの教室の小学生の方が正確に速く計算できますという状態だった。私も、何とかなるかな?と思ってしまったのですが、やはりそう上手くは行かず、結局、高校数学までたどり着けず、途中で諦めてしまわれた。
お母さまは熱心でした。たくさんの教材を子どもに解かせたがった。時に尋常でない量を。でも、子どもの意欲と能力と、公文の進度がうまくかみ合わないとき、子どもは嫌になってしまう。この子はそれで失敗しました。
できる、できるの積み重ねで、登っていくようになっている。そこを高めず、周りが短期で成果を求めると、それなりのものしか得られないものだな、と後から反省した事例です。
ですので、幼児、小学生で学習されている方は、まずは『学習習慣をつけること』『学習意欲をを保ち続けること』を最優先に考えてほしいのです。
もちろん、いついつまでに〇教材、オブジェが欲しい等目標は大事です。
目標が無いと意欲も保てません。意欲が一番大事だけど、『結果』だけが全てとなってしまわないように。大した結果は、小学生では出ません。中学生でも出ません。もちろん、成長の間にだんだん門戸が狭くなっていくのですが、一番の分かれ道は、高校から大学へ上がるとき。
小学校の時だけ見るのではなくて、その先の人生の岐路となる箇所を見つめる。
ずっとぎゅうぎゅうにして勉強漬けにしなくてもいい。日々コンスタントに学習をして、できることを積み重ねていけば、全然勉強できなかった子も、数学得意かも?と良い意味での勘違いをして、自走し始めるから。
私は、まず、そこまで連れていきたいのです。自分で積み重ねてきた自信があるから、自分で歩けると思えるように。新しい問題に挑戦してみよう、失敗してもいいから、と思えるように。
そういう想いで、愛を持ってお子さんを取り囲んであげたい。少し遠巻きに。心配で心配でたまらないお母さんお父さんの気持ちは死ぬほど分かります。絶対に預かっている子たちを伸ばしたい。うまく行かないのは私の責任、と思っています。一緒にお子さんのことを考えていきましょう。
今年も、3月末認定で、たくさんのオブジェ(トロフィー)獲得者が教室から輩出されます。子どもたちの頑張りは、決して周りからではなく、子ども自身から湧き出るものにしたい。今、そうできていなければ、何が原因なのか?子ども目線で考えていくことも大事です。公文を将来やっててよかった!と子ども自身が言えるようにするために、軌道修正が必要な時はしていきましょう。
【追伸】先日、教室に後輩の激励に来てくれた教室OBの男の子から(公文国際学園の高校生)聞いた情報によると、そこそこ良い(!?)国公立の理系を狙うのなら、最終教材の上の研究コースまで学習しないと、出てこない単元があるそうです。(ベクトル等)公文国際学園の高校生は、最終教材までではなく、研究コースまで意識しているということに驚きました。逆にそこまで勉強すれば、かなり得意と言える状態。江ヶ崎中央教室のOGには、中学生から始めて研究コースまで学習した人がいます。やろうと思えば、決してできないことではないと思います。
東郷