
「手ぶらで散歩するような生き方」
昔のことだ。生活に窮して、マンションと車を手放したことがある。車はともかく、義父に頭金を出してもらって初めて購入したマンションだったので、ショックは大きかった。
気落ちしている僕を見かねて、担当弁護士(東京都知事に立候補した弁護士事務所のおひとり)は「家も車も要らないですよ。そんなものは税金や維持費がかかるばかりで、生活の障害にしかならないですよ。私は借家だし、車なんか持つくらいなら何キロでも歩きますよ」と言って慰めてくれた。
近年の想定外の災害や自動車事故の報道を見聞きするたびに、彼の言葉を思い出す。人が生きる目標として、努力の結果、財産を持つというのはスゴく立派なことだとは思うけれど、ただ、それが万が一の際に大きな障害になることも忘れてはならない。
決して負け惜しみではなく、今では、手ぶらで散歩するような生き方が理想だ。
*写真は長野県川上村。岩魚釣りに行った際の道です。