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湯島の夜「異端の鳥」
WOWOWで放送されている映画「異端の鳥」を観ています。バーツラフ・マルホウル監督作品。素晴らしい作品です。
第二次世界大戦下、ホロコーストから逃れるために、叔母の家に疎開した少年。ところが叔母が突然死して、それに驚いた少年が落としたランプで家が全焼してしまいます。
少年は放浪の旅に出ますが、各地で差別されて虐待されてしまいます。「身体を地中に埋められて首だけが地上に出て、そこに鴉が群がる?姿」は、衝撃的です。
たまたま少年に優しく接した者は、少年同様に異端の徒であり、運命は彼ら彼女らに不幸を選ばせてしまうのです。
少年は、それでも運命に流されて生きていくのです。ロードムービー?そんなアメリカ的な軽々しいモノではありません。
異端とは言いますが、異端にあらず正統と称する人々は、集団として村社会に生きているだけで、差別、迫害、略奪に虐殺を平然と行なうのですから、とても正統とは言えません。神が存在するとして、神から見ればすべて異端の徒なのです。少年が立ち寄るところでは人々が虐殺され「人間の残虐性」が浮き彫りにされます。肝心の少年でさえ平然と人殺しを行なうのです。
全編モノクロで描かれるこの作品は、モノクロであるからこその独特な世界が表現されています。モノクロはいいですねぇ。少年が不幸な運命に流されながら生き抜く姿と、普通の人々が少年を徹底的に攻撃する不条理な世界を描いています。
第76回ベネチア国際映画祭でユニセフ賞を受賞した作品だそうです。ポーランドの作家イェジー・コシンスキが1965年に発表した同名小説を原作として、チェコ出身のバーツラフ・マルホウル監督が11年の歳月をかけて映像化した作品だそうです。11年をかけるとは凄いですね。
新人俳優のペトル・コラールが主演を務め、ステラン・スカルスガルド、ハーベイ・カイテルなどのベテラン俳優陣が脇を固めています。
そういえば「ニーチェの馬」(2011年ハンガリー作品)もモノクロだったなぁ。ニーチェは1889年1月3日、トリノの往来で鞭でたたかれる馬の首を抱いて発狂しましたが、これはその馬のお話。タル・ベーラ監督作品です。
つげ義春先生も好きだと言っていた作品です。