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シルバー人材日記「余計なお世話老人になる」

かみさんの仕事「早朝放置自転車監視」に、僕も同行しています。タダ働きです。放置自転車に「警告」のための紙をステープラ(ホチキスのこと)で留めている際に「おい、婆さん、俺の自転車に勝手に紙貼るなよ!」なんて人が現れ、かみさんが殴られたりしたら危ないので一緒に歩いているのです。といっても、放置自転車の数は少なくなり、そのような可能性は低いのですがね。

その監視歩きでちょっとした出来事ががありました。シルバー人材の“歩き仕事”では、途中に存在する公園で30分以上の休憩をとるのですが、その際に、某公園のベンチに寝ている男性がいるのです。某公園は僕の家の近所にあって、歩き仕事以外にもよく前を通るのですが、その男性は数週間前からそこに寝ているのです。僕の住む街では珍しいホームレスの方らしいのですが、この異常な熱波の中でも熟睡しているのか動かないのです。男性の脚が汚れた長ズボンから露出しているのですが、肌の色が死体のような色をしているのです。男性の顔も、口が半開きになっていて、呼吸している様子もなかったのです。

先日、「あれは亡くなっているね」とかみさんに言って、その場で警察に電話しようと思ってスマホに手をかけると、ノソッと男性が動いたのです。驚きました。生きていたんですね。ホッとしてその場をあとにしました。

それから1週間後の今日、まだ台風の影響がないのか降雨もなかったので、男性がいる公園の近くにある郵便局に用事があって出かけたのです。用事を済ませて郵便局を出ると、もの凄い大雨に変わっていました。傘をさして帰宅しようと公園の前を通ると、男性が雨に打たれながらベンチに座っているのです。僕からは後ろ姿しか見えません。男性はフード付きの上着を着てフードを被っていますが、激しい雨に打たれながら微動だにしないのです。その姿は何故か神々しく輝いているようにも見えます。冗談ではなく、そう見えたのです。

僕だって、家族がいるから今の生活ができるのです。家族がいなくなったら、高齢者で貧困である自分も、その男性のようになるかもしれないのです。男性を侮蔑しているのではありません。とても人ごととは思えないのです。

帰宅してからかみさんが市役所に電話をして「公園の男性」の件を伝えると、「クレームですか?」と言われたそうです。「ホームレスの男性が公園のベンチを占拠しているのが迷惑なんですね」と言うのですね。かみさんは「いいえ、男性が台風の雨の中にじっとして座っているので危険だと思ったんです。警察か市役所かどちらに連絡したらいいのかわからなかったので、まずはそちらに連絡したんです」と言うと、「実際に見てみないと判断できないから、のちほどその公園に確認しにまいります」と言われたそうです。こちらの名前も電話番号も聞かれなかったので、「多分、確認には行かないだろうね」とため息をついていました。

あとからネットを調べると、やはり役所に連絡するのがよいようです。公園なので公園緑地課でしょうかね。ホームレスの方なら福祉課でもよいようですね。公園の不法占拠を問題にしているのではなく、男性の生命の心配です。

そういえば、高齢者向けの仕事をするようになってから、街の人に対して(自分で言うのも何ですが)優しくなったような気がします。歩いていて、困ったような人がいると声をかけるようになりました。余計なお世話なのかもしれませんが、まぁ、そうなっちゃたんです。

懐かしい昭和時代の「余計なお世話ばかりする老人」になったような気がします。

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