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二度目の初恋の段

 「劇場版忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」を観てきた。2度目の鑑賞だ。入場特典が先週とは違う物になっているからというのもあるが、1度目の鑑賞では終始ボロッボロに泣かされて細部まで目が行き届かなかったからというのもある。

 忍たま乱太郎。来年で放送32年めになる室町~戦国時台を舞台にした国民的アニメである。原作のタイトルは「落第忍者乱太郎」略して「落乱」。アニメ化にあたり「落第」という言葉がNHKの放送コードに触れるため、忍者のたまご──即ち「忍たま」と言い換えられた。という噂があるが、ソースは定かではない。

 「忍たま」も「落乱」も、基本的には子ども向けのギャグ作品だ。しかしその歴史考証は綿密で、明らかにギャグであるとわかるもの(例えば自転車や自動販売機など)はギャグとして登場することはあれど、登場時期の曖昧な武器や食べ物などは登場しない。当時の戦における戦術や兵法の描写も実に緻密だ。私は短くない期間この作品の二次創作小説を書いていたので、室町~戦国時代の風俗を随分勉強させてもらった。

 さて、前置きはこの辺りにして。アニメも30年以上の歴史を持つとなると、今のアラサーからアラフォー世代にとっては隔世の感もあることだろう。放送開始当初からは随分とキャラクターも増えた。(主に上級生たち)

 しかし、そんな大人たちもかつてはとある男にハートを掴まれていたはずだ。

 そう。「土井半助」という初恋泥棒に!

 土井半助。乱太郎たち一年は組の教科担当担任。25歳のハンサムボーイ。嫌いな食べ物は練り物。口癖は「教えたはずだ!」で神経性胃炎持ち。幼女が沼らない理由がない……!

 何を隠そう、私の初恋も土井半助──いや、土井先生である。

 そんな「初恋泥棒・土井半助」にまんまと初恋を奪われた大人こそ、この映画は絶対に見るべきである。
 序盤から披露される圧巻のアクションシーンに、随所に挟み込まれる彼の過去を暗示させる凄惨な戦の描写。それに何より、土井半助と忍術学園の生徒たち(特にきり丸!)との強い絆……!!
 予習なしでも十分に見応えのある作品ではあるが、余裕があれば土井先生の過去を描いた20期90話「おかえりなさいの段」と30期35話「思い出した手当ての段」、それから忍術学園へ赴任したての頃の彼を描いた第32期2話「ガチガチに固まるの段」と第32期64話「若い人の段」、それと19期90話「土井先生ときり丸の段」を予習して欲しい。観てみ? 飛ぶぞ。

 とにかくこの「劇場版忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」はそんな初恋泥棒・土井半助の魅力が詰まった作品であった。土井半助という男の過去と現在が交錯し、そしてこうあって欲しいと我々が祈る未来へ繋がるエンディングへと着地する見事な演出……!

 かつて土井先生に初恋を奪われた大人が観れば必ず、二度目の初恋に落ちること請け合いだ。私はその末に、二度観て二度恋に泣いた。

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