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スタジオ六畳間

 今から12〜3年ほど前。そう数は多くないのだが音楽で二次創作(忍たま)をやっていた時期がある。いわゆるキャラクターのイメージソング作成だ。DTMで6曲ほどオリジナル曲を作り、その内4曲はCDとして即売会で頒布した。

 そのCDに収録した内の一曲。「彼岸から」という曲について、くもはばき公認広報アカウントにこんなお問合せを頂いた。

 映画効果とはいえ、干支を一回りしてなおこのようなお問合せを頂けるとはまさに驚天動地。嬉しい悲鳴である。
 該当の「彼岸から」というこの曲であるが、結論から言うとWEB上ではフルバージョンを公開しておらずROMと付属の音楽CDにしか収録していない。
 なので、この機会にYoutubeにリリックムービーをアップすることにした。

 何せ12年前の自分が書いた曲なのでこそばゆい部分もなくはないが、映画きっかけで土井先生ときり丸の関係性に初めてハマった人も出戻った人も、よかったらこんな同人楽曲もあることを知って頂けたら幸いである。

 さて、そんなわけで。いい機会なので今週は私がDTMで同人音楽をやっていた頃のことについて振り返ってみようと思う。

 打ち込みにはヤマハのMIDIキーボードを。レコーディングはiPhoneについてきたEarPods(当時はまだジャックがイヤフォンプラグだった)を、編集にはこれまたMacに標準搭載されていたGarageBandを使用していた。MIDIキーボード以外に特別なものは特に買わなかったが、意外とそれなりに曲は作れた。最もレコーディングは専ら自宅の六畳間だったので、ノイズ避けにダンボール箱を被ってみたりはしたが。

 当時も今と変わらずメインの頒布物は小説同人誌であったが、コスプレ写真集やROMもよく作っていた。最初の内は自分もコスプレをする側だったが、すぐにする側から撮る側へ回った。私はもともと大学の映画研究会出身で、推し作品のコスプレ写真を撮るというのは私にとってはセルフ実写化といっても過言ではなかったのだ。

 音楽で二次創作をするようになったきっかけは、自分で企画を主催しROMを作る少し前。友人の主催するタソガレドキ忍者のROM企画に助手兼メイキングで参加させてもらったことに端を発する。参加していたレイヤーさんもメインのカメラマンさんもパフォーマンスが素晴らしく、共有してもらった写真がどれもあまりに素敵だったので、その写真に合う曲が聞いてみたくなったのだ。

 作曲の経験は一応はあるものの、小学生の時にピアノ教室でやったきり。けれど不思議なもので、すぐにメロディーは頭に浮かんだ。ピアノを弾くにあたって指の方はさすがに思う通りに動くまでに些少時間を要したが、曲自体は案外すんなりと完成した。

 そうした次第で完成した私の二次創作音楽処女作「夜に弄る」が、以下の曲だ。
(動画編集はFINAL CUTを使っていた。バージョンは忘れたが……)

 このインストを主催の友人がいたく気に入ってくれて、私は次に歌入りの曲を製作することになった。幸い(?)歌はもともと小説と同じかそれ以上に得意とするところであったので、ボーカロイドに頼らず自分で歌入れを行った。

 しかし、諸々あって友人のタソガレドキ忍者ROM企画は頓挫。なので私の製作したイメージソングも長らく日の目を見ることはなかったのだが、数ヶ月してほとぼりの冷めた頃にちゃっかりニコニコ動画にアップした。
 それが以下の「黄昏を背負うもの」である。

 まだまだ編曲とMIXに荒さが目立つが、歌詞はなかなか二次創作として味わい深いのではなかろうか。(自画自賛)

 時が前後するが、まだタソガレドキ企画が動いていた最中。確か2011年の終わり頃だったと記憶しているが、私も自分で企画を主催してコスプレROMの製作がしたくなった。どうしても、土井先生ときり丸のセルフ実写化映像作品をこの世に生み出したくなったのだ。(このROMの製作にあたり、主演の二人をはじめたくさんの方々にご協力頂いた。十二年めの今でも感謝は尽きない)

 もちろん、映像作品であるからには音楽は欠かせない。なので2012年3月頃から私はこのROMのため新たにインスト含め4曲の楽曲を製作し始めた。ニコニコ動画にアップしているバージョンもあるのだが実はあの動画はデモ版なので、この機会に実際のROMで使用した完成版のデータをここにアップしておこうと思う。

 まずはきり丸のイメージソング「あきんどは川を渡らない」

 当時の職場にDTMでの音楽製作を副業としている先輩がおり多くのアドバイスを貰えたおかげで、この曲はピアノ一本の弾き語りからだいぶ音色が増えて少しだけDTMらしくなっているように聞こえる。また、ボーカルのMIXも少し手慣れてきたかシャリシャリしたノイズがなくなって聞きやすくなっている。

 次に土井先生のイメージソング「君に教えてあげられること」

 ごく一部ではあるが、この曲で漸く編曲にちゃんとパーカッションが登場する。音楽経験がピアノのみだったのでパーカッションの打ち込みにはかなり苦戦した思い出があるが、その分曲に厚みが出たのではないかと思う。個人的には1コーラスめのサビのピアノ旋律と歌詞が「あきんど〜」への返歌的な構成にできたのが気に入っている。

 3曲めは、原作漫画で言及されている「土井先生が自分の着物を解いてきり丸用に仕立て直してやっている」というシーンをイメージして作った曲「渡す」

 初心に立ち帰ったピアノのインストだ。40秒ほどの短い曲ではあるが、処女作の「夜に奔る」よりもだいぶ肩の力が抜けてシンプルだが奥行きのある曲になっているのではなかろうか。

 そして、ROMの締めを飾ったのが今回リリックビデオを公開した「彼岸から」である。(しつこいがもう一度貼っておく)

 この曲もやはりメインの旋律はピアノであるが、コーラス入れとストリングスの音色にかなり気を配った。
 というのもこの曲のテーマがタイトル通り「亡くなったきり丸や土井先生の家族が『彼岸から』彼らの幸せを祈る」というものだったので、コーラスとストリングスで彼岸の人らの存在感を出せないかと模索したためだ。(ちなみに歌詞の視点もいわゆる「神視点」となっている)
 結論としてはまあまあのバランスになっているのではないかと思うが、編曲の意図通りに聴いて頂けているかどうかはご視聴頂いた方々それぞれの判断に譲ろうと思う。

 以上が私のDTM遍歴だ。二次創作ではない完全なオリジナル楽曲を作ろうという気にはならなかった。自分なりに精一杯の力を振り絞って楽曲製作にあたりはしたがそれは萌えの発散のためであり、自分の実力がボーカロイド全盛のDTM界隈で通用するとも思っていなかったし、もっと技術を磨いて通用させようという向上心も特になかったからである。あとは単純に、不思議なものでオリジナル楽曲のメロディーはとんと頭に浮かばなかった。

 ただ、DTMの経験は私にとっていい思い出にはなった。小説でも同じことが言えるが、自分の作ったものが時を経てもなお誰かの生活の一部として息づいているということが私にとって何よりの幸いである。

 なので、今回広報アカウントにマシュマロを下さった方にはこちらからもお礼を述べさせて頂きたい。映画をきっかけに、時を超えて拙作をお愉しみ頂き誠にありがとうございました!

 

 

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