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お受験にのぞむこどもたち
これまでこのnoteではさんざんご両親のことばかり書いてきたので、このあたりで一度お受験の主役であるこどもたちについて書かせていただきたいと思います。
と言っても、ぼく自身は「お受験の主役はこどもである」とはあまり思っていませんで、むしろ「どう考えたってお受験の主役は親御さんだろう」という思いを長年抱え続けてきました。このことをわかっておられないご両親が多いこと、そしてそのことに気づいてほしいという想いがこのnoteを公開するに至ったひとつの動機になっていますが、お子さまのことについて語るこの項も、ぼく自身の実体験をもとに書かせていただきたいと思います。今回はとくにお受験生についてです。
われわれが何気なく使うこの「お受験生」という言葉ですが、あたり前のことながらこの世に「お受験生」という生き物がいるわけではありません。本来、お受験生なる存在はこの世のどこにもおりません。誕生後、ごくふつうに育てられてきた普通の子が五、六歳になったとき、たまたま親の意思で小学校受験をする(させられる)ことになり、そのシーズンのさらにある特定の期間、おべんきょうしたり、お受験のトレーニングすることになったお子さんたちのことをわれわれ大人が便宜上「お受験生」と呼んでいるだけで、お受験期間が終わればこの子たちは元の日常にもどりますし、べつにあいさつやマナーを叩き込まれたからと言ってこどもらしさを失ったわけでもありません。
春になり、桜が咲く頃になるとその子たちは今度は「小学生」と呼び名に変え、また新たな装いの服を着せられますが、年度や学年ごとにどんなお仕着せを着せられていようと、彼らの本質が変わることはありません。どんなカテゴリーに属し、どんな呼び名で呼称されようと、こどもたちがその生き生きとした本質を損なうことはないのです。
よく聞く言説で「むかしにくらべて最近のこどもは変わった」というようなものがありますが、ぼくの実感としては少しもそんなことはありません。とくにぼくがふだん接することの多い幼児から小学生ぐらいのお子さんは、今もむかしもぜんぜん変わっていないように思います。あいかわらずにぎやかで元気いっぱい、そしてやかましい(笑)
ただ、長くこの仕事に就いていて、いつも胸の内にある疑問があります。それは「こどもたちはいったいどの程度、お受験というものを理解しているのだろう?」ということです。
これはじつは長年の謎でして、じっさいのところよくわからない。どんなにしっかりした子でも、まだ六歳で「このお受験は自分の将来に大きく影響を与えるのだ」なんて思っている子がいるとはとても思えないですし、じゃあまったく何も理解していないのかと言われればそうでもない気もします。じっさいに本人たちに聞いてみてもそこのところがよくわかりません。
まあ、ふつうに側で見ている感じで言えば、こどもたちもなんとなくがんばろうとは思ってることはたしかです。親たちも一生懸命だし、先生も一生懸命だし、なんか大事なことらしいし。こどもたち自身も、「お受験に合格すればいい学校に入れる」くらいは理解しています。ではかといって、不合格になったらもうすごく落ち込むかと言われたら、決してそんなことはありません。ご両親はともかく、こどもたちは案外けろっとしています。親の愛情さえしっかり感じられていれば、こどもは傷つくことはありません。「お受験が終わったら、家族みんでTDLに行こうね」という約束だけで一生懸命がんばるのがこどもなのです。
しかし当日の緊張感はべつです。状況をよく理解していないことと、本番に彼らを襲う緊張感は別物です。子どもたちにとってはそっちの方が大きな問題であり、彼らが対峙せねばならないのは自分の合否に対する不安などではなく、当日ただひたすらにどきどきする胸の鼓動と体を襲うふしぎなプレッシャーなのです。
仮にお子さまの身になってみたらお受験というのはこんな感じです。
なんか静かに座っていなければならない
なんかネクタイを締めた偉そうな知らない人と話す
なんかよくわからないけど、いっぱい質問を受ける
なんかよくわからないけど初めて会った子と共同作業をやらされる
なんかプリントを解かされる
なんかいい服に着替えさせられる
なんか親が妙にパリッとしたいい服を着ている
なんか親が緊張気味
とりあえず自分が良い子であることを示さねばならないらしい
これが丸二日間続く
いかがでしょう? これでは緊張するなというほうが無理な話です。
もっともこれは人それぞれ、というかお子さましだいなところはありまして、当日ものすごく緊張する子としない子がいます。こればかりはお受験当日になってみないとわかりません。当日、ガチガチに緊張してしまって泣き出してしまう子や、「なんかあっさり終わったー」とけろっとした顔で報告してくれる子もいます。
いまさら言うまでもありませんが、これらこどもたちが受けるお受験は主に三つのパートに分かれています。学校によるこの三つの審査をお子さまはすべてクリアしなければなりません。
・ペーパー試験
・行動観察
・面接
とくに三番目の面接はお子さまにとってもっとも高いハードルで、これを苦手とするお子さまは多い印象です。わたしどもは本番にそなえて上記三つすべての練習をしますが、上二つとは異なり、面接に関してはお子さまの真のポテンシャルが試される場だということもあり、指導には多くの時間を割きます。それまでペーパー試験や行動観察の練習をたのしそうにやっていたお子さまも、面接の練習になると一転顔つきが引き締まるのは、幼児にとってもこの面接がたぶんもっとも「受験」を感じられるパートだからなのでしょう。
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清-note(幼児教室の現場から)
幼児教室の先生をしています。じっさいにお受験を指導してきた立場から、お若いご両親に知っていただきたいことやお受験への取り組みかたなどをわか…
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